お気にいりのピアニストがきっとみつかる。Vol.3〜小山実稚恵

第899回サントリー定期シリーズ

その名が世界的なコンクールに
冠された大作曲家、
チャイコフスキー(1840-1893)

 小山実稚恵さんがチャイコフスキー国際音楽コンクールに入賞し、世界から注目を集めたのは1982年、今から35年前のこと。その思い出について以前小山さんは、初めてモスクワ音楽院大ホールの舞台に立った感覚、それが日中の時間帯で、飾られた作曲家たちの肖像に並ぶ天窓からサッと光が差し込む情景、ピアノを弾くことにとらわれすぎず音楽を大切にすることに気づいた心境の変化を、まるで昨日のことのように語っていらっしゃいました。大切な思い出の一つだそうです。

 2年前にデビュー30周年を迎えた小山さんは、「最近、音楽への愛情がますます強くなっている。もちろん昔からピアノも音楽も大好きだったけれど、これまでとは違う強い気持ちを持つようになった」と話していました。長い演奏活動の中で温め続けてきた音楽への愛が、今また花開いて別の姿を見せているのかもしれません。

 そんな小山さんが12月の定期演奏会で演奏するのは、彼女がチャイコフスキーコンクールの本選でも演奏し、その後も何度も弾き続けている、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。この協奏曲は、チャイコフスキーが、友人でモスクワ音楽院院長だったニコライ・ルビンシテインのために書き始めるも、草稿の段階で、ルビンシテインから貧弱で演奏不可能だと非難をうけたという逸話が知られています。作品は結局別のピアニストに献呈され、その後世界で高く評価されて、ルビンシテインも演奏するようになりました。

小山実稚恵 ©ND CHOW

 小山さんは、普段やさしくふんわりした空気をまとい、柔らかい語り口の中にも強い意志や音楽への愛情が感じられる方。ひとたびピアノに向かうと表情がキリリとし、パワフルな音楽を紡ぎ出します。壮大であたたかいロシアの大地を思わせるこの不朽の名作がもつ精神を、より深まった音楽への愛情とともに届けてくれるでしょう。

 そして指揮の伊藤翔さんは、なんとちょうど小山さんがコンクールに入賞した1982年生まれ。小山さんと気鋭の伊藤さん、そして東京フィルは、どんな新鮮なチャイコフスキーを聴かせてくれるのでしょうか。
文:高坂はる香(音楽ライター) イラスト:沙良志乃

伊藤 翔

【公演情報】
第899回サントリー定期シリーズ
2017年12月5日(火)19:00
サントリーホール

指揮:伊藤 翔(第1回ニーノ・ロータ国際指揮コンクール優勝)
ピアノ:小山実稚恵*

カバレスフキー/歌劇『コラ・ブルニョン』序曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番*
チャイコフスキー/交響曲第4番
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522(平日10:00〜18:00)

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