お気にいりのピアニストがきっとみつかる。Vol.1〜阪田知樹

第110回東京オペラシティ定期シリーズ・第893回オーチャード定期演奏会


「ピアノの魔術師」とも呼ばれたフランツ・リスト
(1811-1886)

 リストのピアノ曲は人気が高く演奏機会も多くありますが、弾く側のピアニストたちの話を聞いていると、“リスト大好き派”と“どうも共感できない派”の間に、わりと深い溝があるように思います。共感できない派は、リストがヴィルトゥオーゾピアニストとして一世を風靡した時代に書いた曲が持つ、技巧アピール感や軽そうなイメージに、感情移入しにくいと感じている模様。

 一方の前者“大好き派”は、そんな“誤解”を覆したい気持ちもあってか、より愛を燃え上がらせているよう。特に、スターピアニストの第一線を退いた後の作品にみられる深さや新しさ、慈善活動にも熱心だった人間性に寄せる敬愛が、しばしば語られます。

 さて、6月定期演奏会で登場する阪田知樹さんはというと、筋金入りのリスト大好きピアニスト。若き日の超絶技巧作品から晩年の宗教的な作品まで、あらゆるレパートリーに愛情を注ぎ、「自分にとってリストの存在はピアノを弾く意味の一つ」だと話していました。そんな彼が昨年リスト国際ピアノコンクールで優勝したことは、なるべくしての結果というか、リスト愛の勝利というか、とにかく喜ばしいニュースでした。

リストをこよなく愛するという阪田
C)HIDEKI-NAMAI

 今回阪田さんが演奏するのは、リストのピアノ協奏曲第1番。この作品は、リスト20代の頃に着手されるも幾度も改訂され、40代半ばを迎えた頃ようやく発表された協奏曲。技巧を要する華麗さ、耳に残るメロディ、独特のハーモニーなど、リストの魅力がいっぱいに詰まっていますから、公演当日は、自らピアニストでもある渡邊一正マエストロと東京フィルのサポートのもと、これを心から楽しそうに弾く阪田さんの姿を見ることになるでしょう。ソリストの思い入れたっぷりの演目ということで、間違いなくおもしろくなるはず。どうぞお聴き逃しなく。

 ちなみに、この曲はトライアングルが多用されることから、当時の批評家エドゥアルト・ハンスリックに“トライアングル協奏曲”と言われてしまったことでも有名です。トライアングル奏者の活躍にもご注目を!
文:高坂はる香(音楽ライター) イラスト:沙良志乃

【公演情報】
第110回東京オペラシティ定期シリーズ

2017年6月14日(水)19:00
東京オペラシティコンサートホール

第893回オーチャード定期演奏会
2017年6月18日(日)15:00
Bunkamuraオーチャードホール

指揮:渡邊一正
ピアノ:阪田知樹*(2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクール優勝)

リスト/交響詩『レ・プレリュード』、ピアノ協奏曲第1番*
ブラームス/交響曲第4番
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522(平日10:00〜18:00)

【東京フィル2017-18シーズン聴きどころ】
「お気にいりのピアニストがきっとみつかる。」特集ページ

http://tpo.or.jp/information/detail-2017-18season-piano-index.php