お気にいりのピアニストがきっとみつかる。Vol.2〜イム・ジュヒ

第896回オーチャード定期演奏会・第112回東京オペラシティ定期シリーズ

 2000年生まれの韓国のピアニスト、イム・ジュヒさん。

 9月定期公演が日本デビューの16歳ということで、実は私自身、まだ生演奏を聴いたことがありません。……というわけでいろいろリサーチしていたところ、日本でいち早く彼女の演奏に触れられる今度の公演は、どうやら逃さずに聴いておいたほうが良いような気がしてきました。これから大活躍しそうな気配がすごいのです!

9月定期には2000年10月ソウル生まれの俊英、イム・ジュヒが登場

 まず、イム・ジュヒさんの経歴をご紹介しましょう。子供のころから師事してきたのは、ソウル大学名誉教授のシン・スジョン女史。2015年ショパンコンクールの覇者、チョ・ソンジンの子供時代の先生としても知られる名教師です。

 オーケストラデビューは2010年、9歳のとき。サンクトペテルブルクの白夜祭で、ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団と共演。実に華々しいデビューです。ゲルギエフ氏はその後も彼女と共演しているので、才能を高く買っているのでしょう。
 2014年には、チョン・ミョンフン指揮ソウル・フィルと、5月にショパンのピアノ協奏曲第1番を、8月にベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を共演。昨年10月にもマエストロ・チョン指揮アジア・フィルの公演で、ベートーヴェンの同曲ソリストに招かれていることから、マエストロの信頼がいかにあついか窺えます。

ベートーヴェンが「ピアノ協奏曲第3番」を完成させたのは1803年、33歳頃のこと。

 彼女がマエストロ・チョンとピアノ協奏曲第3番を演奏した3年前(当時13歳)の映像を観ると、この少女が、高い技術はもちろん、作品を通して伝えたい明確な何かを持っていることがビンビン伝わってきます。迷いのない表現、芯の強い音楽。ふと、チョ・ソンジンさんが15歳で浜松コンクールの舞台に現れ、堂々たる音楽性を見せつけて優勝したときのことを思い出しました。

 今回彼女が東京フィルと共演するのも、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。若くして、このちょっとシブく、悲劇的でかつ力強いベートーヴェン中期の名曲を得意のレパートリーとしているとは、なんだか素敵です。
 知るほどに、実際にその音楽を聴いて確かめてみたい気持ちが膨らむピアニスト。公演を楽しみに待ちましょう。

文:高坂はる香(音楽ライター) 
イラスト:沙良志乃

 
 

【公演情報】
第896回オーチャード定期演奏会

2017年9月18日(月・祝)15:00
Bunkamuraオーチャードホール

第112回東京オペラシティ定期シリーズ
2017年9月21日(木)19:00
東京オペラシティコンサートホール

指揮:チョン・ミョンフン
ピアノ:イム・ジュヒ*

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番*
ベートーヴェン/交響曲第3番『英雄』
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522(平日10:00〜18:00)

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