批評家はもとより、熱狂的な聴衆からの賞賛を獲得していることからも、マクベスは、キーンリサイドにとって当たり役であることがわかる。もっとも、彼のマクベスに対する見方は複雑である。
「初めてマクベス役を演じたとき、私は誰かが“マクベスはそれほど特別な役ではないでしょう”と言ったことを覚えています。でも、私はそうは思いません。《マクベス》が上演される際、多くの注目がマクベス夫人に向くということはあります。しかし、ドラマは一貫してこの夫と妻を並列して描いているのです。マクベスはある意味で弱い人間です。彼は長年兵士として生きてきたし、その功績によって出世もしました。けれども、それこそが、彼は政治家または偉大な思想家ではないということでもあるのです。その点、マクベス夫人は全く異なります。彼女には大いなる野心があります。この対照がドラマの面白さとなっているのです」
キーンリサイドは、今回のプロダクションで、1847年版(フィレンツェ初演版)にある最後のアリアを歌えることをとても喜んでいる。これは、ヴェルディ自身によって1865年の改訂で外されてしまったものだ。
「私はこのアリアが無駄なものだとは思いません。音楽の美しさもさることながら、たとえば《オテロ》の幕切れを彷彿とさせるようなところだけをとっても、非常に魅力的で興味深い曲です」
[インタビュー・文 ジョージ・ホール(在ロンドン・音楽ジャーナリスト)]
*インタビューは(2)に続きます。