(インタビュー・文:田口道子)
「この役はとても難しい役。繊細な歌唱表現で観客の皆さんまでアルフレードに恋をしてしまうくらいに歌えたら最高です」
ーーポーリさんは以前のインタヴューで、アルフレード役はとてもやり甲斐があると話していらっしゃいますね。テノールの技量ばかりでなく表現も複雑だとおっしゃっていますが、この役柄についてどのように考えていらっしゃいますか?
アルフレードは人間的に見て、とても複雑な役柄です。オペラの初めではぎこちない感じで、内気な性格を表わしていますよね。アルフレードは純粋な青年で、上流社会の宴会には慣れていない様子が窺えます。そしてオペラが進行していく中で、彼は成長し、人を愛すことを知り、それまで肉体的にしか愛を知らなかった女性に心から愛されている自覚を持ちながらも嫉妬に苦しみます。最後には自分の行動を心から悔やんでヴィオレッタのもとに戻ります。(第3幕で)『パリを離れよう』とヴィオレッタに言うけれど、もうすでに彼女に死が迫っていることを悟っている。その苦しみを乗り越えながら彼女の死への道を愛を持って付き添って行こうとします。
声楽的に見ても、第一幕の軽やかなリリコから第2幕第2場にはドラマチックな表現に変わっていきます。ヴィオレッタもそうですが、アルフレードもまたこの変化を充分に表現できなければなりません。とても難しい役だと思っています。
ーーでは、ポーリさんにとって理想のアルフレード像とは?
若々しくてカッコよくてハンサムで・・・あくまでも理想像ですよ。声はロマンチック、つまり温かみがあって光沢のある響きが必要だと思います。マエストロ・ムーティがおっしゃるように、アルフレードは《トロヴァトーレ》のマンリーコと《リゴレット》のマントヴァ公爵と並ぶ役ですから、若くて軽いだけの声では表現しきれないと思います。最近気がついたのですけれど、アルフレード役はどの公演でも若いテノールが歌っていることが多いです。どういう訳か2~3年するとアルフレードを卒業してしまうテノールがほとんどです。ドミンゴがゼッフィレッリ監督の映画でアルフレードを歌ったのは50歳近かったかもしれませんけれど、これは特殊な例で、当時すでに舞台では歌っていませんでした。でも、若くてデビューしたばかりの歌手ではなかなかこの役で評価されないと思いますよ。主役のソプラノと父ジェルモンのバリトンとの間に埋もれてしまいますからね。アリアもカヴァレッタもピアノやピアニッシモでの表現がたくさんありますから、声楽的なテクニックもしっかり身に付けて繊細な歌唱表現で観客の皆さんまでアルフレードに恋をしてしまうくらいに歌えたら最高ですね。僕はまだしばらくこの役を大切にしたいと思っています。
ーーポーリさんがこの役を歌う上で大切にしていることは何でしょうか?
僕は場面場面で自分と同化させるようにしています。ヴィオレッタを愛する恋人であったり、父親に諭されたり叱られたりする息子であったり、現実の世界に置き換えてアルフレードになりきるようにしています。
*その2に続く
★下記アドレスより、ローマ歌劇場による動画で、第1幕のアルフレードの聴かせどころをご覧いただけます。
https://www.facebook.com/operaroma/videos/2164124380270096/
■公演情報
ローマ歌劇場2018年日本公演
《椿姫》
2018.
9月9日(日) 15:00
9月12日(水) 15:00
9月15日(土) 15:00
9月17日(月・祝)15:00
東京文化会館
指揮: ヤデル・ビニャミーニ
演出: ソフィア・コッポラ
美術: ネイサン・クロウリー
衣裳: ヴァレンティノ・ガラヴァーニ
照明: ヴィニーチョ・チェーリ
ビデオ: イゴール・レンツェッティ、ロレンツォ・ブルーノ
振付: ステファン・ファヴォラン
■出演
ヴィオレッタ・ヴァレリー: フランチェスカ・ドット
フローラ・ベルヴォワ: エリカ・ベレッティ
アルフレード・ジェルモン: アントニオ・ポーリ
ジョルジョ・ジェルモン: アンブロージョ・マエストリ
ローマ歌劇場管弦楽団
ローマ歌劇場合唱団
ローマ歌劇場バレエ団
※表記の出演者は2018年5月31日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。
■料金(税込)
S席¥54,000 A席¥47,000 B席¥40,000 C席¥33,000
D席¥26,000 E席¥19,000 F席¥12,000
学生券¥8,000
*学生券はNBS WEBチケットのみで2018.8/3(金)18:00より受付開始。