グレゴリー・クンデ インタビュー(2)

「マノンは麻薬! 純真なデ・グリューは
何をしても彼女を許してしまうんです」 

グレゴリー・クンデ
Photo:Chris Gloag


ーーデ・グリューはどんな人ですか。

 ものすごく純真で、すっかりマノンにまいってしまう。初恋の女性であり、リアルなのは彼女だけ。とにかく諦めきれない。《椿姫》のアルフレードと同じです。マノンはしっかりデ・グリューを抑え込んでいるから、彼女が何をしても彼は許してしまうんです。


ーー彼は恋するうちに成長しますか。

 成長するのはマノンが死んだ時です。残念ながら。そして彼女の死を追いかけていく。ご存じ彼女は“お客さんたち”を追い払っていくでしょう。デ・グリューは囚人船の船長に一緒に連れて行ってくれと頼み込む。床掃除も汚物の始末もなんでもやるからといって。船長がOKを出したから二人は船に乗り込んで、共に苦労する。そして彼女は彼の腕の中で死ぬわけです。もちろん彼は生き残る。経験を本にするわけですからね(笑)。


ーーデ・グリューのキャラクターはマスネとプッチーニでは違いますか。

 違います。


ーーマスネも歌われたのですよね。

 はい、何度も歌っています。マスネのデ・グリューはほんとうに若くて無心で、かれが聖職に就くまでの心の中が実によく描かれています。マノンは彼を誘惑するわけだから、それは重要なことです。彼女が教会にまで来てあのような行為をしてデ・グリューを聖職の世界から誘い出すというのは、当時としては大問題でした。でもこのくだりはプッチーニの方にはない。こちらはマノン・レスコーの話だからです。マノンは華麗で贅沢な存在として描かれる。そこにデ・グリューが戻って来てマノンに立ち向かう。なんてことをしてくれたんだ! あら、ダーリン、いいでしょ、愛してるんですもの。そしてまた一緒になる。驚くべきことです。無条件の愛と情欲。とにかく彼女は麻薬なんですよ!

 とにかく舞台の外ではふつうの気さくなアメリカ人という感じだった。僕はよくしゃべるからと自認して、役柄の話などを始めると止まらない。そして歌に関してだけではなく、演技者として登場人物を裏付けるための論理性を淡々と展開していく。それをいかにもおしゃべり口調で。ロンドンで取材したのだが、夫人と娘さんと一緒に来ていて、短期間の滞在期間を満喫しているようだった。
インタビュー・文:秋島百合子

ローマ歌劇場《マノン・レスコー》より
Photo:Silvia Lelli / TOR

【公演情報】
ローマ歌劇場2018年日本公演
《マノン・レスコー》
9月16日(日) 15:00 神奈川県民ホール
9月20日(木) 15:00 東京文化会館
9月22日(土) 15:00 東京文化会館

指揮: ドナート・レンツェッティ
演出: キアラ・ムーティ
美術: カルロ・チェントラヴィーニャ
衣裳: アレッサンドロ・ライ
照明: ヴィンセント・ロングエマーレ

■出演
マノン:クリスティーネ・オポライス
デ・グリュー:グレゴリー・クンデ
レスコー:アレッサンドロ・ルオンゴ

ローマ歌劇場管弦楽団
ローマ歌劇場合唱団

*※表記の出演者は2018年1月15日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。

■料金(税込)
S席¥54,000 A席¥47,000 B席¥40,000 C席¥33,000
D席¥26,000 E席¥19,000 F席¥12,000
学生券¥8,000
*学生券はNBS WEBチケットのみで2018.8/3(金)18:00より受付開始。

http://www.nbs.or.jp/stages/2018/roma/