(原文はバイエルン国立歌劇場より提供 文:レイリ・ダリオシュ)
まずはじめは、やはり《タンホイザー》に関わるところから。カステルッチ自身が語っている言葉をご紹介します。
「タンホイザーは、彼の存在論的次元での失敗に特徴づけられています。彼はどこから見ても、悲劇的なものについてのこの上演にぴったりです。というのも、彼は自分の場所を見つけることに失敗し、生(せい)における喜びを持っていないからです。ヴェーヌスのところにも留まれない、エリーザベトのところでも駄目、ローマでも同じく、魂の救いを見出すことはありません。タンホイザーの道に見通しはありません。目標もありません。唯一可能な終着点は、愛の中の死です。ギリシア悲劇は希望に抗うひとつのシステムではありますが、ワーグナーの場合、何かが身体のかなたにあるという感覚があります。必ずしも生の喜びとは関係のない、ある抵抗です。ワーグナーの宇宙で身体は闘いの中にありますが、この闘いはギリシア的でもキリスト的でもないように見えます。そうではなくて、むしろ仏教的です。《パルジファル》でもそうであるように、ここでは、時間と身体を凌駕する救済の道筋を見ることができます。」
◾️ロメオ・カステルッチ プロフィール
チェゼーナに生まれ、農学を修めたのち、ボローニャ芸術大学で舞台美術と絵画を学ぶ。1981年、クラウディア・カステルッチ、キアラ・グイディと劇団ソチエタス・ラファエロ・サンツィオを結成、創立時より芸術監督を務める。代表作に『オレステイア』、『ジュリオ・チェザーレ』、『神曲 地獄篇』、『神の子の顔の概念について』、『オルフェオとエウリディーチェ』、『春の祭典』、『いずれとも知れず』がある。演出家および舞台美術家としての活動の傍ら、演劇理論についての著作でも知られる。《タンホイザー》は彼のバイエルン国立歌劇場での初演出。
【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演
《タンホイザー》
作曲:R.ワーグナー
演出:ロメオ・カステルッチ
指揮:キリル・ペトレンコ
9月21日(木) 3:00p.m.
9月25日(月) 3:00p.m.
9月28日(木) 3:00p.m.
会場:NHKホール
■予定される主な出演
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ
※表記の出演者は2017年1月20日現在の予定です。
http://www.bayerische2017.jp/tannhauser/