演出家ロメオ・カステルッチの創作に迫る(1)

《タンホイザー》リハーサル中のロメオ・カステルチ
Photo: W. Hösl

 5月21日《タンホイザー》新演出初演には、これが彼にとってバイエルン国立歌劇場での初演出となることもあり、演出家ロメオ・カステルッチへの期待や関心もひとしおのようです。初演に寄せてのカステルッチを紹介する記事では、これまで手がけたオペラの数々に見られる演出意図や特徴などが記されています。ここではその中から、抜粋でご紹介していきます。
(原文はバイエルン国立歌劇場より提供 文:レイリ・ダリオシュ)

《タンホイザー》リハーサルより
Photo: W. Hösl

 まずはじめは、やはり《タンホイザー》に関わるところから。カステルッチ自身が語っている言葉をご紹介します。
「タンホイザーは、彼の存在論的次元での失敗に特徴づけられています。彼はどこから見ても、悲劇的なものについてのこの上演にぴったりです。というのも、彼は自分の場所を見つけることに失敗し、生(せい)における喜びを持っていないからです。ヴェーヌスのところにも留まれない、エリーザベトのところでも駄目、ローマでも同じく、魂の救いを見出すことはありません。タンホイザーの道に見通しはありません。目標もありません。唯一可能な終着点は、愛の中の死です。ギリシア悲劇は希望に抗うひとつのシステムではありますが、ワーグナーの場合、何かが身体のかなたにあるという感覚があります。必ずしも生の喜びとは関係のない、ある抵抗です。ワーグナーの宇宙で身体は闘いの中にありますが、この闘いはギリシア的でもキリスト的でもないように見えます。そうではなくて、むしろ仏教的です。《パルジファル》でもそうであるように、ここでは、時間と身体を凌駕する救済の道筋を見ることができます。」

その(2)に続く

《タンホイザー》リハーサルより
Photo: W. Hösl

◾️ロメオ・カステルッチ プロフィール
チェゼーナに生まれ、農学を修めたのち、ボローニャ芸術大学で舞台美術と絵画を学ぶ。1981年、クラウディア・カステルッチ、キアラ・グイディと劇団ソチエタス・ラファエロ・サンツィオを結成、創立時より芸術監督を務める。代表作に『オレステイア』、『ジュリオ・チェザーレ』、『神曲 地獄篇』、『神の子の顔の概念について』、『オルフェオとエウリディーチェ』、『春の祭典』、『いずれとも知れず』がある。演出家および舞台美術家としての活動の傍ら、演劇理論についての著作でも知られる。《タンホイザー》は彼のバイエルン国立歌劇場での初演出。


【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演
《タンホイザー》
作曲:R.ワーグナー
演出:ロメオ・カステルッチ
指揮:キリル・ペトレンコ
9月21日(木) 3:00p.m.
9月25日(月) 3:00p.m.
9月28日(木) 3:00p.m.
会場:NHKホール

■予定される主な出演
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ

※表記の出演者は2017年1月20日現在の予定です。
http://www.bayerische2017.jp/tannhauser/