《魔笛》伝説の名演出誕生秘話(3)

 演出家アウグスト・エヴァーディングとともにこのプロダクションを手がけた美術家ユルゲン・ローゼによる伝説の名演出《魔笛》誕生秘話をご紹介するシリーズ最終回は、エヴァーディングと密な関係を築いていたからこそのエピソードです。

幸福感は計算されていた!?
 〈パ・パ・パのアリア〉が歌われる最後の場面で、たくさんの小さなパパゲーノやパパゲーナが登場するのは、この《魔笛》のトレードマークと呼ばれることもあるようですが、ローゼはエヴァーディングの、アイデアをこう分析しています。
「子どもたちを登場させるアイデアを、エヴァーディングは彼の手がけたすべての《魔笛》演出に盛り込みました。それにはまったく個人的な理由もあったのだと思います。エヴァーディングは結婚したのがかなり遅く、それから4人の息子の父親になったのです。このフィナーレは、彼のごく私的な幸福感をも証明するもので、もちろん観客にもいつも喜ばれました。エヴァーディングのような演劇人なら、当然それも計算に入れていたはずです」
 たしかに、このパパゲーノとパパゲーナと子どもたちの場面は、温かい幸福感に満ちています。それが演出家の“策略”だと知ったとしても、自然に微笑んでしまう・・・。これこそが伝説の名演出の威力と言えるでしょう。

Photo:Wilfried Hösl

Photo:Wilfried Hösl

【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演

《魔笛》
作曲:W.A.モーツァルト
演出:アウグスト・エヴァーディング
指揮:アッシャー・フィッシュ
9月23日(土・祝) 3:00p.m.
9月24日(日) 3:00p.m.
9月27日(水) 6:00p.m.
9月29日(金) 3:00p.m.
会場:東京文化会館

■予定される主な出演
ザラストロ:マッティ・サルミネン
タミーノ:ダニエル・ベーレ
夜の女王:ブレンダ・ラエ
パミーナ:ハンナ=エリザベス・ミュラー
パパゲーノ:ミヒャエル・ナジ
パパゲーナ:エルザ・ベノワ

※表記の出演者は2017年1月20日現在の予定です。

http://www.bayerische2017.jp/