バイエルン国立歌劇場2017年日本公演《タンホイザー》は、ミュンヘンでの初演から4ヶ月後というタイミングで日本のファンの皆さまに届けられます。大きな注目を集めるクラウス・フロリアン・フォークトのほかにも、ヴェーヌス役のエレーナ・パンクラトヴァ、領主ヘルマン役のゲオルク・ゼッペンフェルトといったプレミエ・キャストが日本公演にも登場します。
それぞれのキャラクターに生かされる歌手たちの魅力を、2回に分けてご紹介します。
●クラウス・フロリアン・フォークト
いまもっとも充実したワーグナー・テノールとして、人気・実力ともに世界のトップであるクラウス・フロリアン・フォークト。日本でも“ローエングリンの化身”といわれたフォークトですが、さて、次はタンホイザー! この役を歌うのは、今年5月のミュンヘンでの新演出初演が初めてのこと。秋には日本にやって来ます。
聖か俗か・・・。常に2つの間で悩み苦しむタンホイザーには、高らかに歌うだけではなく、言葉の抑揚そのもので表現することも要求されます。ドイツ歌曲ですら、超のつくほどドラマティックに歌い表現するフォークトのタンホイザー役となれば、どれほどとなることか!? 命を賭して葛藤するフォークトのタンホイザーに、またもファンの目がハート型になること間違いなし!
ロシア出身のエレーナ・パンクラトヴァのレパートリーには、《影のない女》のバラクの妻、《パルシファル》のクンドリー、《ワルキューレ》のジークリンデ、《アイーダ》や《エレクトラ》《ノルマ》のタイトルロールと、強烈な役柄が並びます。すでにスカラ座や英国ロイヤル・オペラをはじめとする大舞台で認められている実力派ソプラノの証しです。
禁断の地ヴェーヌスベルクに住み、美と官能の女神であるヴェーヌスには、ドラマティックな声と妖艶な表現力が要求されます。ワーグナーの聖地バイロイト音楽祭でも、強さと繊細さを備え、多面的な性格表現が高く評価されているとなれば、ヴェーヌスはまさしく打ってつけ!と期待が高まります。
●ゲオルク・ゼッペンフェルト
ドレスデン国立歌劇場宮廷歌手の称号をもつゲオルク・ゼッペンフェルトは、朗々たる低音を響かせ、説得力と存在感を発揮するドイツのバス。欧米の著名な歌劇場での活躍は広く知られています。数々のレパートリーで、さまざまなキャラクターを演じ分けることでも高い評価をもっています。
領主ヘルマンは、姪エリーザベトのタンホイザーへの想いを知るが故に、歌合戦のお題を、タンホイザーの得意な“愛の本質”としたはずだったのですが、予想もしなかったことが起ってしまいます。愛情深さゆえに葛藤を抱くこととなるヘルマン…‥。役柄の内面を深く描き出すゼッペンフェルトは、タンホイザーのそれとは異なり、観る者の心には痛みとなって刺さることになるのかもしれません。
【公演日程】
バイエルン国立歌劇場日本公演
《タンホイザー》
作曲:R.ワーグナー
演出:ロメオ・カステルッチ
指揮:キリル・ペトレンコ
9月21日(木) 3:00p.m.
9月25日(月) 3:00p.m.
9月28日(木) 3:00p.m.
会場:NHKホール
■予定される主な出演
領主ヘルマン:ゲオルク・ゼッペンフェルト
タンホイザー:クラウス・フロリアン・フォークト
ウォルフラム:マティアス・ゲルネ
エリーザベト:アンネッテ・ダッシュ
ヴェーヌス:エレーナ・パンクラトヴァ