彌勒忠史(制作総指揮・脚本)インタビュー Vol.2

提供:紀尾井ホール

 前号では『アモーレとプシケ』のストーリーと、どのような舞台作品なのかを語っていただきました。今回は、登場人物のキャラクターと、出演者たちについてお話をうかがいます。まず、主役カップル、アモーレとプシケについて。

「アモーレは神々の中で最も美しいと言われる美青年神です。羽の生えた幼児として表されることが多いですが、自らの愛を知り、青年の男性に成長するのです。人間も同じですね。プシケはただ美しいだけではなく、愛のためには勇敢になれる女性です。アモーレを一旦失ってしまった時、勇気を振り絞って、恐ろしいヴェーネレのところへ出掛けていきます。その一方、あれほど開けてはいけないと言われていた禁断の小箱を開けてしまうような愚かさもあります。でも、その理由が可愛い。愛するアモーレに美しいと思ってもらいたいためなんですね」

 アモーレを演じるのは、コンテンポラリー、バレエ、ミュージカルと、多彩なジャンルに活躍するダンサーの白髭真二。プシケには、ロックバンドとの共演や他ジャンルの舞台経験もあり、メディアでも活躍する日本舞踊家、花柳凜が扮しますね。
「音楽は目にみえない芸術ですが、それを視覚化するのがダンスなんです。白髭さんはうってつけのダンサーです。日本舞踊もあて振りというか、歌詞に合わせて振りのしぐさをする表現芸術ですから、このような音楽劇に向いています。花柳凜さんは伝統を重んじながらさまざまな音楽で踊られていて素晴らしい舞踊家さんです」

 観世流シテ方の観世喜正と梅若紀彰がヴェーネレ役兼父王役をダブル・キャストで務めます。
「私は、キャスティングで公演の成否の80%が決まると思っています。この能楽界のお二人にはだめもとで出演をお願いしましたら、1日だけなら、とスケジュールを調整していただけ、夢のようなダブル・キャストが実現しました。お能のファンの方なら、観世先生、梅若先生を観るためにいらしていただいても大満足されるでしょう」

 プシケの幸せを妬み、彼女をそそのかして、姿の見えない夫の正体を暴かせる姉二人に、ソプラノの阿部雅子、カウンターテナーの上杉清仁が扮します。この二人の役どころは?
「シンデレラ物語の姉二人のように、ヒロインを窮地に陥らせる意地悪キャラです。でも、単に意地悪をするのではなく、笑いもとります。その笑いこそ、バロック・オペラの精神なんです。上杉さんはコミカルな役もこなす芸巧者なカウンターテナー。阿部さんも演技上手なソプラノです。この二人が舞台を盛り上げてくれるでしょう」

 音楽の聴きどころをお教えください。
「濱田芳通さん率いる古楽アンサンブル、アントネッロが出演します。フルートとコルネットの濱田さん、ヴィオラ・ダ・ガンバの石川かおりさん始め、チェンバロ、リュートなど腕達者揃いの世界的スーパー古楽集団です。今回は箏の吉永真奈さんが共演しますので、さらに面白くなるでしょう」

 見どころ、聴きどころ、実に満載だ。最後に、プロデューサー、演出家、台本作家としての心構えをうかがった。
「私は演出家とはいうものの、古今東西の舞台芸術家たちのやってきたことの中から作劇法を得ているにすぎません。そして、過去の偉大な作曲家の音楽の力を借りて舞台をつくります。その中で全力を尽くしています。どうか、このかつてない音楽舞踊劇を実際に体験なさってください。お待ちしています」
取材・文/萩谷由喜子


【Information】

彌勒忠史プロデュース
バロック・オペラ絵巻《アモーレとプシケ》

(セミ・ステージ形式/日本語字幕)
2020.3/19(木)18:00
3/20(金・祝)14:00
紀尾井ホール

制作総指揮・脚本:彌勒忠史
音楽ディレクター:濱田芳通
振付・ステージング:森田守恒

キャスト:
プシケ:花柳凜
アモーレ、西風:白髭真二/2役
ヴェーネレ、父王:観世喜正(19日)・梅若紀彰(20日)/2役・ダブルキャスト
2人の姉:阿部雅子、上杉清仁

歌:阿部雅子(ソプラノ)、上杉清仁(カウンターテナー)、新海康仁(テノール)、坂下忠弘(バリトン)
演奏:アントネッロ(古楽アンサンブル)、吉永真奈(箏)

料金:S¥10,000 A¥7,000 U29-A*¥3,000
*U29は公演当日に29歳以下の方を対象とする割引料金です。

問:紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061(10時~18時/日・祝休)
http://www.kioi-hall.or.jp/