「アモーレは絵画や彫刻などに登場する愛らしい裸の幼児の姿で親しまれていますが、彼の金の矢に射られた者は、たとえ神様でさえ恋に落ちる、という絶大なパワーを持っているんですね。彼の持つ力=愛の力には誰も敵わない。このお話は、そんな彼自身の恋の物語なんです。アモーレは愛と美の女神ヴェーネレ、ヴィーナスのことですが、その女神の息子です。ヴェーネレは人間界のとある娘プシケが、そのあまりの美しさゆえに、人々から自分よりも崇められるようになっていることに気づきます。怒ったヴェーネレは息子のアモーレに“プシケが世界で一番みじめでいやらしい男と恋に落ちるよう、金の矢を射かけよ”と命じたのです。そこで、アモーレは人間界に出かけますが、美しいプシケを一目見た途端に恋に落ち、動転して自らを自身の矢で傷つけてしまい、プシケの虜になってしまいます。アモーレは母のヴェーネレのもとへ戻り、プシケを妻にしたいと願い出ます。もちろん、ヴェーネレは大激怒……。その先は、どうぞ、舞台をご覧になってください」
興味津々のストーリー展開ですね、これは、既存のオペラなのですか?
「今回上演するのは、ローマ時代の作家ルキウス・アプレイウスの『黄金のロバ』を元に、私自身が台本を書き起こしました。今年の4月、5月、6月と書き進めて、ちょうど何とか第一稿を書き上げたところです。これからさらにブラッシュアップします」
つまり、新作の世界初演ということになりますね。音楽はどうするのでしょう。
「パスティッチョといって、いろいろな作曲家の曲をストーリーに合わせて自由に組み合わせる手法を採用しました。ルネサンス期から初期バロック期までのメガ・ヒット曲の中から、それぞれの場面にふさわしい曲を当て込みます。例えば、フレスコバルディの『このように私を蔑むのか』とか、モンテヴェルディの『ポッベアの戴冠』の愛の二重唱などです」
この時代のオペラと声楽曲に精通している彌勒さんだからこそ可能な手法ですね。とすると、この舞台のジャンルを何と呼べばいいでしょうか。
「そうですね。ジングシュピールの手法によるオペラというか、ミュージカルと考えていただいても結構です。日本舞踊、ダンス、能と、日本の伝統芸能の要素にヨーロッパの古楽のいいとこ取りを組み合わせた和洋折衷の舞台作品です。歌はイタリア語ですが、日本語のセリフでストーリーが進行しますし、字幕も付きますから誰でもお楽しみいただける舞台となるでしょう」
文:萩谷由喜子
【Information】
彌勒忠史プロデュース
バロック・オペラ絵巻《アモーレとプシケ》
(セミ・ステージ形式/日本語字幕)
2020.3/19(木)18:00
3/20(金・祝)14:00
紀尾井ホール
制作総指揮・脚本:彌勒忠史
音楽ディレクター:濱田芳通
振付・ステージング:森田守恒
キャスト:
プシケ:花柳凜
アモーレ、西風:白髭真二/2役
ヴェーネレ、父王:観世喜正(19日)・梅若紀彰(20日)/2役・ダブルキャスト
2人の姉:阿部雅子、上杉清仁
歌:阿部雅子(ソプラノ)、上杉清仁(カウンターテナー)、新海康仁(テノール)、坂下忠弘(バリトン)
演奏:アントネッロ(古楽アンサンブル)、吉永真奈(箏)
チケット発売日
一般:9/7(土)ウェブチケット・午前0時~/電話・午前10時~
友の会優先:9/4(水)ウェブチケット・午前0時~/電話・午前10時~
料金:S¥10,000 A¥7,000 U29-A*¥3,000
*U29は公演当日に29歳以下の方を対象とする割引料金です。
問:紀尾井ホールチケットセンター 03-3237-0061(10時~18時/日・祝休)
http://www.kioi-hall.or.jp/