情熱全開で新時代を祝う
平成が終わり、新天皇が即位して元号が変わる。4月の東京フィル定期では、バッティストーニが、まるでそれに即したようなプログラムを組んでいる。1937年イギリス国王ジョージ6世の戴冠式で演奏されたウォルトンの「戴冠行進曲『王冠』」と、1790年神聖ローマ帝国皇帝レオポルト2世の戴冠式祝賀演奏会で披露されたモーツァルトのピアノ協奏曲第26番「戴冠式」だ。そしてチャイコフスキーの交響曲第4番。同曲の華麗な曲調や冒頭のファンファーレもまたタイムリーと言えるだろう。
イタリアの俊英バッティストーニは、2016年同楽団の首席指揮者就任後も、数多の名演を生み出し、昨年11月の《メフィストーフェレ》、今年1月の「シェエラザード」と、直近でも活力漲る劇的演奏を展開している。彼の音楽を表す言葉といえば、情熱的、躍動的、ダイナミック、豊かなカンタービレ、雄弁…これらは祝祭的な本演目にまさしく相応しい。「戴冠式」のソロは小山実稚恵。日本を代表する名手の円熟のピアノも聴きものだ。
さらに、ロシアで長く過ごしたバッティストーニは、同国の音楽に力を注ぎ、特にチャイコフスキーの交響曲は、第5番、第6番「悲愴」共にCDとコンサートで壮絶な熱演を聴かせている。以前彼は、ロシア音楽について「メロディへの偏愛と物語性がイタリア音楽にとても近く、地中海的で激しく情熱的」と語っていた。イタリアで完成され、チャイコフスキー作品の中でもラテン的要素が強い交響曲第4番は、この言葉と前記の特長に最も適合する作品。エネルギッシュでパッショネイトなライヴへの期待に胸が躍る。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年4月号より)
2019.4/16(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
4/18(木)19:00 サントリーホール
4/21(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
2019.3/25(月)発売
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp/