“特別なコンビ”が導く魂の浄化
チョン・ミョンフンと東京フィルは特別な関係にある。ポスト(現在は名誉音楽監督)を保ち続けて18年。昨年取材した際に彼は「オーケストラとは最初の共演で知り合い、友達から親友になり、最終的には家族になります。私は意味深い関係を長く続けてきた東京フィルを“日本の家族”と呼んでいます」と語っていた。“家族”になった近年の両者は、一段高い境地に達している。パッショネイトな面は不変だが、以前に比べて肩の力が抜けた、スケール大にしてニュアンス豊かな表現を聴かせるようになった。演奏会形式の《フィデリオ》や姉キョンファとのブラームスのヴァイオリン協奏曲などの雄弁な演奏で感銘を与えた今シーズンの最後を飾るのは、2月のマーラーの交響曲第9番。当コンビのマーラーもまた特別だ。2001年「復活」の感動的熱演以降、毎回濃密な演奏を聴かせ、16年の第5番、17年の「復活」では、まさしく一段上の名演を展開している。それだけに究極の交響曲=第9番への期待は絶大だ。
緩-急-急-緩の異例の構成で「死に絶えるように」終わるこの特別な交響曲。マエストロ・チョンは「この曲で明確なのは、人生が終わりに来ているということ。第1楽章の冒頭から心臓の鼓動が弱々しく刻まれ、ヴァイオリンのフレーズが『さようなら』と言っています」と話していた。10年以上前の彼とN響や東京フィルのライヴは、前半抑え気味で、後半に人生最期の情熱をぶつけるような演奏だったが、“家族”と奏でる今回は果たしてどうなるのか? “特別なコンビ”が披露する“特別な作品”に“特別な注目”が集まる。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年2月号より)
第916回 サントリー定期シリーズ
2019.2/15(金)19:00 サントリーホール
第917回 オーチャード定期演奏会
2019.2/17(日)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
第123回 東京オペラシティ定期シリーズ
2019.2/20(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp/