【指揮者・曲目変更】2020年6月定期の聴きどころ

マエストロこだわりの、
母国ソヴィエト・ロシアの2つのユニークな「組曲」

 ミハイル・プレトニョフが特別客演指揮者として、東京フィルの定期演奏会に登壇し続けているのは嬉しい限り。東京フィルから雄大で力感あふれるサウンドを引き出し、彼ならではの独特の解釈が作品に新しい光を当てるなど、東京の音楽シーンに刺激を与えている。
 2020年は3月(スメタナ「わが祖国」)に続き、6月にも登場して、母国ソヴィエト・ロシアの2つのユニークな「組曲」を聴かせてくれる。

 前半はソヴィエトの作曲家シチェドリンの代表作「カルメン組曲」。弦楽器と打楽器という特殊な編成で、ビゼー《カルメン》の名旋律(「アルルの女」の「ファランドール」も!)が次々と現れる楽しい作品。20世紀作品ならではの刺激やユーモアがあるものの、全体的にはビゼーの音楽を新鮮な響きでしっかり楽しめる名編曲で、2019〜20年には複数の楽団が取り上げるなど、人気作となりつつある。プレトニョフはシチェドリンと4手ピアノで共演するなど親しい交流があり、誰よりもその人柄と音楽の力を知る指揮者と言えるだろう。決定的な名演への期待が高まる。

 後半はチャイコフスキーの「組曲第3番」。4つの曲で40分強という大作で、まだ聴く機会の多い作品とは言えないが、緊密な交響曲とは違い、肩の力を抜いてチャイコフスキー一流のあふれる旋律美と華やかなオーケストレーションに浸れる、愛らしい組曲である。プレトニョフは本作を繊細かつスケール豊かに構築して、作品の真価を存分に示してくれるに違いない。マエストロこだわりの2曲、ぜひ実演でその魅力を堪能したい。
文:林 昌英

*ロシア在住の指揮者ミハイル・プレトニョフは、渡航制限等の見通しが立たない事から、来日は不可能となりました。本公演は指揮者および曲目を変更して開催となりました。(6/5主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

https://www.tpo.or.jp/information/detail-20200605-01.php

【公演情報】
第938回オーチャード定期演奏会
2020.6/21(日)15:00 Bunkamura オーチャードホール
第134回東京オペラシティ定期シリーズ
2020.6/22(月)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
第939回サントリー定期シリーズ
2020.6/24(水)19:00 サントリーホール

指揮:ミハイル・プレトニョフ

シチェドリン/カルメン組曲
チャイコフスキー/組曲第3番