東京二期会の新シーズンが宮本亞門演出《魔笛》で開幕

 9月8日、東京文化会館大ホールにて、東京二期会の2021-22シーズンが、宮本亞門演出《魔笛》で開幕した。公演に先立って行われた初日組のゲネプロ(舞台総稽古)をレポートする。
(2021.9/6 東京文化会館 写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:西村廣起)

 今回の《魔笛》は、2013年オーストリア・リンツ州立劇場の改修後の記念すべきオープニングを飾ったプロダクションだ。宮本自身初の欧州で迎えたオペラ・プレミエだった。
 その後の快進撃は多くの人が知るところだろう。15年の東京文化会館公演でも連日完売を記録。同じ年には、鳥取県倉吉市の倉吉未来中心での公演も成功をおさめた。その後も横須賀、相模原での開催を経て、満を持して東京文化会館に帰ってくる。東京二期会2021-22シーズンの開幕を、有名な〈序曲〉の変ホ長調の3つの和音が告げる。

 本作は、2組の異なる男女がそれぞれに試練を乗り越えるという物語だが、宮本亞門演出では、家族の絆をとおして、より大きな人類の絆、もとい生命の絆にも想いを馳せられる。善役や悪役といったステレオタイプの人物は登場せず、悪役の典型のように復讐の念に燃える夜の女王には、夫を喪った悲しみ、娘パミーナへの母なるまなざしが見える。一方、ザラストロは、奴隷をも抱えるヒエラルキーの上に君臨しつつ、人類にとっての正しい道を模索する者として描かれる。東京プレミエから6年を経ての再演だが、私たちがコロナ禍という「試練」に生きている今、当時に増して《魔笛》のメッセージが届けられるべき時代ではないだろうか。

 指揮はギエドレ・シュレキーテ。当初指揮を予定していたフランスのリオネル・ブランギエが新型コロナウイルス感染拡大にかかる待機期間にともなうスケジュールの都合により来日が不可能となり、代わっての出演となった。リトアニアの出身で、早くもすでにザルツブルク音楽祭、ライプツィヒ歌劇場、チューリッヒ歌劇場、フランクフルト歌劇場等に登場。今シーズンからリンツ・ブルックナー管弦楽団の首席客演指揮者に就任し、バイエルン州立歌劇場でのデビューも決まっている。これが初来日となる新星のモーツァルトの演奏を劇場で見届けたい。













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【指揮ギエドレ・シュレキーテからののメッセージ】


【Information】
《二期会創立70周年記念公演》リンツ州立劇場との共同制作
東京二期会オペラ劇場〈二期会名作オペラ祭〉 
モーツァルト《魔笛》
(全2幕、日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演)


2021.9/8(水)18:30、9/9(木)14:00、9/11(土)14:00、9/12(日)14:00
東京文化会館

演出:宮本亞門
指揮:ギエドレ・シュレキーテ
管弦楽:読売日本交響楽団
   
ザラストロ:妻屋秀和(9/8, 9/11) 斉木健詞(9/9, 9/12)
タミーノ:金山京介(9/8, 9/11) 市川浩平(9/9, 9/12)
弁者:久保和範(9/8, 9/11) 河野鉄平(9/9, 9/12)
僧侶Ⅰ:杉浦隆大(9/8, 9/11) 的場正剛(9/9, 9/12)
僧侶Ⅱ:栗原 剛(9/8, 9/11) 澤原行正(9/9, 9/12)
夜の女王 :安井陽子(9/8, 9/11) 高橋 維(9/9, 9/12)
パミーナ:嘉目真木子(9/8, 9/11) 盛田麻央(9/9, 9/12)
侍女Ⅰ:北原瑠美(9/8, 9/11) 角南有紀(9/9, 9/12)
侍女Ⅱ:成田伊美(9/8, 9/11) 宮澤彩子(9/9, 9/12)
侍女Ⅲ:石井 藍(9/8, 9/11) 岡村彬子(9/9, 9/12)
パパゲーナ:種谷典子(9/8, 9/11) 守谷由香(9/9, 9/12)   
パパゲーノ:萩原 潤(9/8, 9/11) 近藤 圭(9/9, 9/12)
モノスタトス:高橋 淳(9/8, 9/11) 升島唯博(9/9, 9/12)
武士Ⅰ:与儀 巧(9/8, 9/11) 今尾 滋(9/9, 9/12)
武士Ⅱ:髙崎翔平(9/8, 9/11) 金子慧一(9/9, 9/12)
合唱:二期会合唱団

問:二期会チケットセンター03-3796-1831 
http://www.nikikai.net