《マノン・レスコー》 演出家キアラ・ムーティ スペシャル・インタビュー(2)

 《マノン・レスコー》の演出を手がけたキアラ・ムーティのスペシャル・インタビュー2回目は、演出の焦点について。作品にとって何が重要か、登場人物たちを描くためにはどのようなことが必要か・・・真摯な取り組みが語られています。
インタビュー・文:田口道子

《マノン・レスコー》(2014年2月ローマ歌劇場公演より)
Photo:Silvia Lelli / TOR

ーー《マノン・レスコー》演出の焦点は?
 プレヴォーの作品がとても好きで『マノン』の原作も読みました。18世紀のフランスの世界が描かれている本がとても好きなので、フランス革命や啓蒙主義に関する本などもたくさん読みました。多分日本の影響かも知れませんよ。子供の頃は日本のアニメに夢中になっていて、特に『ベルサイユのばら』の大ファンでした。レディ・オスカルが素敵で、フランス革命のこともアニメで知ったのです。これがきっかけとなってこの時代のマリー・アントワネットのこととか本当にたくさんの本を読みました。《マノン・レスコー》を演出するにあたっては歴史的背景がとても重要な要素です。オペラ作品の中には時代背景をどこにおいても構わない、例えば私がフランスで演出したグルックの《オルフェオとエウリディーチェ》のように、時代は存在させずにすべて心理的な視点で仕上げることができる作品もありますが、《マノン・レスコー》や《フィガロの結婚》のような、登場人物が背景となる時代に生きている人たちが中心の作品は、時代を変えてしまうとストーリーが信じられないものになってしまいますよね。深みのない表面的な作品になってしまいます。
 今回、18世紀末という時代設定に忠実な舞台を作ったのは、《マノン・レスコー》は歴史的な背景を変えることができない作品だと思うからです。ここで時代設定を変えて現代にしてしまったら、マノンはエスコートガールになってしまいます。その時代における社会を描いている作品ですから、舞台装置も衣裳もその時代を表わして、観客をその世界に引き込むことで、よりストーリーが分かりやすくなるでしょう。それはとても重要だと思うのです。

スペシャル・インタビュー(3)につづく

【公演情報】
ローマ歌劇場2018年日本公演
《マノン・レスコー》
9月16日(日) 15:00 神奈川県民ホール
9月20日(木) 15:00 東京文化会館
9月22日(土) 15:00 東京文化会館

指揮: ドナート・レンツェッティ
演出: キアラ・ムーティ
美術: カルロ・チェントラヴィーニャ
衣裳: アレッサンドロ・ライ
照明: ヴィンセント・ロングエマーレ

■出演
マノン:クリスティーネ・オポライス
デ・グリュー:グレゴリー・クンデ
レスコー:アレッサンドロ・ルオンゴ

ローマ歌劇場管弦楽団
ローマ歌劇場合唱団

*※表記の出演者は2018年1月15日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。

■料金(税込)
S席¥54,000 A席¥47,000 B席¥40,000 C席¥33,000
D席¥26,000 E席¥19,000 F席¥12,000
学生券¥8,000
*学生券はNBS WEBチケットのみで2018.8/3(金)18:00より受付開始。

http://www.nbs.or.jp/stages/2018/roma/