自分自身のペース配分が重要です。例えば第2幕は、作品の始まる第1幕と大きくと異なり、とても難関です・・・第2幕の歌い方には様々なスタイルが要求されます。ドラマティックな瞬間の直後に抒情的なフレーズを歌うのは大変難しいのです。たとえば、マノンと兄のデュエットは非常にドラマティックですが、その後はより抒情的で艶めかしく誘惑的な音楽が続き、デ・グリューと出会うと、二人は長く激しいデュエットを豊かなオーケストラとともに歌い上げます。
この作品には、長いフレーズと高音域の音符が沢山あります。マノンを歌いながら自分の感情をコントロールするのはとても難しいことですが、この高度な要求を長丁場で歌うには、歌うことと感情面の両方で、自分自身をしっかりペース配分することが必要です。私は演じることが好きで、感情と演技することは私にとってとても大切なことです。マノンはとても複雑な女性で、彼女の人格の中に沢山の側面があります。女の子っぽく、ドラマティックであり、抒情的であり、艶めかしく、破滅的であり、それ以上であり・・・とにかくあらゆるものが詰まっているのです。
ーー主人公マノンの生き方について、一人の女性としてどのような感想をお持ちですか?また、彼女に生涯を捧げることとなったデ・グリューの生き方については? 究極のところ、マノンとデ・グリューは最後に「幸せだった」と感じていると思いますか?
マノンは特別なタイプの女性です。マノンはすべてを手に入れられると信じているのです。幸せになりたいと思っていますし、愛する男性と共にありたいと思い、お金持ちになりたいのです。満ち足りた人生を生きたいと思っているのです。でも現実にはそのような人生はほぼ不可能ですよね。マノンの問題は――だからこそ、悲劇的に美しいともいえるのですが――何かを、あるいは誰かを手に入れた途端に、それらに興味を失うということです。
マノンとデ・グリューは、いつまでも幸せな人生を送れたとは思いません。マノンは常に失踪し続け、彼女を愛する全ての人々に苦難を与え続けたことでしょう。デ・グリューの宿命はマノンに支配されています。マノンはデ・グリューにとっては純粋な魔法なのです――抗しがたい誘惑であり、彼の運命は彼女の運命と結びついているのです。彼は彼女の望みを全て見たし、彼女の呪文のもとに生きているのです。マノンは自分の運命は自分でコントロールしています。でもデ・グリューは違います・・・マノンが彼の運命そのものなのです。
*その3に続く
【公演情報】
ローマ歌劇場2018年日本公演
《マノン・レスコー》
9月16日(日) 15:00 神奈川県民ホール
9月20日(木) 15:00 東京文化会館
9月22日(土) 15:00 東京文化会館
指揮: ドナート・レンツェッティ
演出: キアラ・ムーティ
美術: カルロ・チェントラヴィーニャ
衣裳: アレッサンドロ・ライ
照明: ヴィンセント・ロングエマーレ
■出演
マノン:クリスティーネ・オポライス
デ・グリュー:グレゴリー・クンデ
レスコー:アレッサンドロ・ルオンゴ
ローマ歌劇場管弦楽団
ローマ歌劇場合唱団
*※表記の出演者は2018年1月15日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。
■料金(税込)
S席¥54,000 A席¥47,000 B席¥40,000 C席¥33,000
D席¥26,000 E席¥19,000 F席¥12,000
学生券¥8,000
*学生券はNBS WEBチケットのみで2018.8/3(金)18:00より受付開始。