チャイコフスキー・コンクール最高位の若きヴァイオリニストが東京フィル初登場!
©Vincent Huang
シーズンを締めくくる3月定期演奏会に特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフとともに登場するのは、2015年チャイコフスキー国際コンクールで最高位(1位なし2位)のヴァイオリニスト、ユーチン・ツェン。1994年台湾生まれの24歳で、母国台湾を中心にすでに大変な人気を博している。マエストロ・プレトニョフとはすでにチャイコフスキー等で録音を終えている。昨年8月の来日の際に、インタビューを行った。
人気ヴァイオリニストのプライベートシーン
「僕自身はやりませんが、テニス観戦が好きで、ロジャー・フェデラーが特に好きです。テニスは純粋に技術によって結果が決まるスポーツの一つだと思うのです。野球やバスケットボールは時に、ジャッジに左右されるように見える。野球なんて、ストライクゾーンが審判によってものすごく広くなったりするでしょう。でも、テニスはもっと純粋に技術的なスポーツだと思います。もちろん、時にはアウトのャッジが審判によって違うこともありますが、抗議することもできますし。ただ、テニスのボールを打つ音は好きですけれど、音声はたまに邪魔になりますね。プレイヤーが時々、アピールのために声を出したりするでしょう。「ウッ!」とか。」
©Universal Music Ltd., Taiwan
テニスから見えた自身の音楽観
「若い演奏家にも、ときどき、自分がどういうジェスチャーをするかを考えて、そのポーズを練習したりする人がいるんです。私にはなぜそんなことをするのか理解できないのですが。音楽を聴きたくてコンサートに行くのであって、ダンスを観たいわけじゃないですよね(笑)。若い演奏家の間でそういうトレンドがあるように思いますが、自然な姿ではありません。優れた演奏家たちはそんなふうに動きません。私がロジャー・フェデラーを好きなのもそういう理由で、彼のプレイはとてもスマートです」。
自身が目指す演奏スタイルについて
©Universal Music Ltd., Taiwan
「自分自身のスタイルを確率させるのは、道のりが必要で、いろいろな音楽家と協働しつつ、同時に自分自身の意見を持って――もちろん、最初はしっかりとした意見でなくてもよいのですが、別の人と共同作業するときに、どんな方向に向かって行きたいかとか、どんなスタイルでやりたいかとかいったことを考える上での自分の意見を持つべきだと思います。多くの人と一緒に仕事をするのは、自分自身のスタイルを成長させて、それを演奏に反映させられるように構えを持つチャンスだと思います。その上で、私が演奏で目指したいのは、エレガントであること、自身の内面を聴き手に伝えて感情をゆさぶる演奏をすること。聴衆のみなさまにはCDからだけでも私の音楽から何かを感じていただけるような演奏をしたいですが、実際に私を目にして演奏を聴く方々にとっても楽しめるものでなければなりません。舞台は退屈だったり気の散るようなものであってはいけませんから。
若い演奏家はインターネットに演奏の動画をたくさんアップしています。みんなとてもいい演奏だけれど、2分も聴いたら『別のことをしなきゃ』という感じになる。1時間も聞いていたくなるような演奏家はほとんどいません。自分自身に語りかけてくる演奏かどうか、聴いていて、飽きないし、疲れないし、いつも何かを感じさせてくれる……そういう演奏でなければと思います」
尊敬する音楽家はいらっしゃいますか?
「ハイフェッツ(20世紀ヴァイオリンの巨匠。1901-1987)です。伝説的な演奏をしたということだけではなく、あのような年齢まできわめて高い水準の演奏をし続けたというのは本当に素晴らしい、信じられないようなことです。毎日毎日、信じられないほどたくさんの練習をしなければなりません。それを成し遂げたという意味でも、素晴らしいと思うんです。私も彼のように70歳を超えるまで演奏し続けていたい。長い道のりです。本当に驚くべき、偉業だと思っています」。
未来を見据える若き名手の定期初登場が楽しみだ。
▼ユーチン・ツェンから皆様へのメッセージ▼
●第918回 サントリー定期シリーズ
2019.3/13(水)19:00 サントリーホール
●第124回 東京オペラシティ定期シリーズ
2019.3/15(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
●第919回 オーチャード定期演奏会
2019.3/21(木・祝)15:00 Bunkamuraオーチャードホール
指揮:ミハイル・プレトニョフ
ヴァイオリン:ユーチン・ツェン*(2015年チャイコフスキー国際コンクール最高位)
チャイコフスキー/スラヴ行進曲
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲*
ハチャトゥリアン/バレエ音楽「スパルタクス」より“アダージョ”
ハチャトゥリアン/交響曲第3番「交響詩曲」