ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団

トランペット15本の咆哮! 超弩級のシンフォニーを体験


 東京フィルハーモニー交響楽団の指揮者陣にあって、ひときわ野心的なプログラミングで目をひくのが、特別客演指揮者のミハイル・プレトニョフ。ロシア音楽の奥深さを知らしめる伝道師のごとく、実に多彩な曲目を取りあげてくれる。3月の定期演奏会ではチャイコフスキーのスラヴ行進曲とヴァイオリン協奏曲(独奏はユーチン・ツェン)に、ハチャトゥリアンのバレエ音楽「スパルタクス」より「アダージョ」と交響曲第3番「交響詩曲」が演奏される。

 なんといっても目をひくのはハチャトゥリアンの「交響詩曲」。なにしろ15本のトランペットが鳴り響くというド派手な作品で、オルガンまで加わって、異様なテンションの高さで盛り上がる一大スペクタクルなのだ。ロシア革命30周年のために書かれたとあって、その祝祭性は並大抵のものではない。あまりに思い切りのよい作風で暴れすぎたのか、結局はジダーノフ批判で「形式主義」の烙印を押されてしまうのだが、今となってはこれも異形の交響曲に与えられた勲章のようなもの。実演で聴ける機会は貴重だ。

 チャイコフスキーで独奏を務めるユーチン・ツェンは2015年チャイコフスキー国際コンクールでヴァイオリン部門最高位を獲得した台北出身の新星。勢いのあるソロを聴かせてくれそうだ。
 なお、文京シビックホールでも、ほぼ同一のプログラムが演奏されるが、こちらは協奏曲がグラズノフのヴァイオリン協奏曲となっている。これもまた意欲的な選曲で興味深い。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2019年3月号より)

2019.3/13(水)19:00 サントリーホール
3/15(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
3/21(木・祝)15:00 Bunkamura オーチャードホール
3/23(土)15:00 文京シビックホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522 
http://www.tpo.or.jp/