東京二期会 《ファルスタッフ》〈レクイエム〉連続公演

 東京二期会は「東京二期会 夏のヴェルディ・フェスティバル」と銘打ち、今年7月から8月にかけてジュゼッペ・ヴェルディ晩年の傑作、2編を続けて公演する。
 まずは、7月16日に東京文化会館にて開幕する《ファルスタッフ》。いわずと知れたヴェルディ最後のオペラであり、作曲家の集大成というべき名作だ。

 指揮はメトロポリタン歌劇場、ウィーン国立歌劇場でも常連のベルトラン・ド・ビリー。東京二期会には、2018年の「プッチーニ三部作〜《外套》《修道女アンジェリカ》《ジャンニ・スキッキ》」以来の登場となる。今回の来日期間中は、東京交響楽団の定期にも登場し、ブルックナー〈交響曲第7番〉ほかを指揮する予定だ。

左:ベルトラン・ド・ビリー 右:ロラン・ペリー 

 演出はロラン・ペリー。舞台の細部までこだわるユーモア、ファンタジーを含んだ演出が得意とされ、その舞台はつねにメトロポリタン歌劇場、ロイヤル・オペラ・ハウス、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座等世界の歌劇場で上演されている。今回の《ファルスタッフ》はスペインのテアトロ・レアルで初演され絶賛されたプロダクション。ちなみにテアトロ・レアルでの公演は、ダニエーレ・ルスティオーニの指揮で、ブルーレイ、DVD化されているので、公演について事前にお知りになりたい方はぜひ入手されたい。

 《ファルスタッフ》は東京二期会にとっても大事な作品のひとつという。二期会初演は創立30周年にあたる1982年。次いで2001年創立50周年記念公演として上演された。それから20年後の今回は創立70周年記念公演。ファルスタッフ役に今井俊輔、黒田博、アリーチェ役に髙橋絵理、大山亜紀子ほか、美声とアンサンブル力に長けた実力ある歌手が揃った。オーケストラは東京フィルハーモニー交響楽団。

左より:今井俊輔、黒田 博、髙橋絵理、大山亜紀子

 そして、8月12日、13日には、東京オペラシティコンサートホールにて「レクイエム」を演奏する。昨年夏に開催が予定されていたが、コロナ禍の影響を受け延期。今夏、指揮、ソリスト、オーケストラ、会場もかわることなく公演が決まった。

 すなわち、指揮にはダニエーレ・ルスティオーニ。流麗で抒情性豊かな音楽作りに、端正な容姿もあいまって、日本でも多くのファンを獲得。7年前の東京二期会《蝶々夫人》で日本デビューし、それから3年後の《トスカ》で再登場。今や、バイエルン州立歌劇場、ミラノ・スカラ座、チューリヒ歌劇場、パリ・オペラ座等主要歌劇場に数多く登場し、フランス国立リヨン歌劇場首席指揮者を務めている。メトロポリタン歌劇場《アイーダ》、ロイヤル・オペラ・ハウス《椿姫》など、ヴェルディのオペラでも世界的な賞賛を受けるルスティオーニが、今回、日本で初めてヴェルディ作品を披露する。ソリストには、木下美穂子、中島郁子、城宏憲、妻屋秀和と国際的キャリアをもった歌手を含めて二期会を代表するヴェルディ歌いが並んだ。オーケストラはファルスタッフと同じ東京フィル。

左より:ダニエーレ・ルスティオーニ (C)Davide Cerati、木下美穂子 (C)oshinobu Fukaya/aura.Y2、中島郁子、城 宏憲、妻屋秀和

 未だ収まることのないコロナ禍のなか、日本では劇場内での感染予防を徹底しつつ、上演が重ねられてきた。クラシック音楽ファンにとっては、不安と息詰まる思いを抱えながらも、生の音楽に触れる喜びを実感する日々。この期に演奏される「レクイエム」には、世界に再び平穏が訪れますようにと、祈るような思いを託さずにはいられない。


【Information】
●東京二期会オペラ劇場《ファルスタッフ》
2021.7/16(金) 18:30、7/17(土)14:00、7/18(日)14:00、7/19(月)14:00
東京文化会館 大ホール

http://www.nikikai.net/lineup/falstaff2021/index.html


●二期会スペシャル・コンサート ヴェルディ「レクイエム」
2021.8/12(木)、8/13(金)各日19:00 東京オペラシティ コンサートホール

http://www.nikikai.net/concert/verdi_requiem2020/index.html


【動画】
《ファルスタッフ》演出:ロラン・ペリーからのメッセージ