東京二期会が2021年に放つオペラ第1弾は、サン=サーンスの《サムソンとデリラ》。当初20年4月に上演を予定していたが、コロナ禍の影響で21年1月に延期となっていた公演だ。奇しくも今年はサン=サーンスの没後100年。その記念公演でもある。
公演に先立ち1月5日に行われた福井敬、池田香織組の最終総稽古を取材した。
(2021.1/5 Bunkamuraオーチャードホール 撮影:寺司正彦)
《サムソンとデリラ》は 旧約聖書に基づく、英雄サムソンと絶世の美女デリラのドラマティックな物語。特別な怪力をもつヘブライの英雄サムソンは、敵対するペリシテ人を次々と倒すが、ペリシテ人の娘デリラは、復讐のためにサムソンを誘惑する。デリラの執念の誘惑にサムソンはついにデリラの虜となり、ペリシテの神ダゴンの神殿に囚われの身となる。髪を切られ神通力を失い眼をえぐられたサムソンだが、神への懺悔とともに再び怪力を取り戻し、ついにはダゴンの神殿を崩落させ、ペリシテの人々を道連れに死ぬ。
ドラマティックかつ、神殿の崩壊というスペクタクルな結末をもつオペラなだけに、なかなか舞台にかかることのない《サムソンとデリラ》だが、演出家・飯塚励生の舞台構成と栗山聡之の影像がその世界観を壮大に描く。
そして、なんといってもこのオペラの最大の魅力はサン=サーンスの音楽にある。サムソンとデリラの物語を紡ぎ出すサン=サーンスの甘美で豪華絢爛な音楽は、この上なく極上だ。特に第2幕でデリラによって歌われるアリア〈あなたの声に心は開く〉は、メゾソプラノ歌手に与えられた最高傑作と言っても過言ではないだろう。東京二期会コンチェルタンテ・シリーズはセミ・ステージ形式での上演ゆえ、音楽にどっぷりと浸れる好機会だ。
オペラ《金閣寺》での名演が記憶に新しい指揮のマキシム・パスカルのもと、福井敬、池田香織をはじめ、小森輝彦、ジョン ハオ、妻屋秀和と、いまや東京二期会で中軸をなす歌手陣が揃った。
【関連記事】
●新春のオペラはドラマティコのサムソン役に初挑戦〜樋口達哉(テノール)インタビュー
【information】
サン=サーンス没後100周年記念公演
東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ
《サムソンとデリラ》(新制作/セミ・ステージ形式上演)
2021.1/5(火)、1/6(水)各日19:00 Bunkamura オーチャードホール
指揮:マキシム・パスカル
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
出演
デリラ:板波利加(1/5) 池田香織(1/6)
サムソン:樋口達哉(1/5) 福井 敬(1/6)
ダゴンの大司祭:門間信樹(1/5) 小森輝彦(1/6)
アビメレク:後藤春馬(1/5) ジョン ハオ(1/6)
老ヘブライ人:狩野賢一(1/5) 妻屋秀和(1/6)
ペリシテ人の使者:加茂下 稔(1/5) 伊藤 潤(1/6)
第1のペリシテ人:澤原行正(1/5) 市川浩平(1/6)
第2のペリシテ人:水島正樹(1/5) 髙崎翔平(1/6)
合唱:二期会合唱団
*出演を予定していた指揮者のジェレミー・ローレルは、新型コロナウイルス感染症に係る14日間の待機期間に伴うスケジュールの都合で、来日不可能となりました。代わって本公演の指揮者にマキシム・パスカルが出演します。(12/10主催者発表)
問:二期会チケットセンター03-3796-1831
http://www.nikikai.net/lineup/samson_et_dalila2020/index.html