東京二期会オペラ劇場は、11月21日(木)より日生劇場にてオッフェンバック作曲のオペレッタ《天国と地獄(地獄のオルフェ)》を上演する。2019年は、作曲家ジャック・オッフェンバックの生誕200年にあたり、東京二期会もそれを記念しての公演となる。
指揮には、大阪フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者でハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー名誉指揮者の大植英次。二期会公演には13年のJ.シュトラウスⅡ《こうもり》に続いて2度目のオペレッタでの登場となった。オッフェンバックの音楽について大植は、「気品がありながら、ちょっとトゲがある。リズム感がすごくあって、生き生きとしている。メロディーがめちゃくちゃきれい」と語り、「(オッフェンバック生誕200年となる)2019年は、彼の再評価の年になるのでは」と抱負をこめる。
演出には、文学座所属の名演出家、鵜山仁。オペラ演出にも定評があり、《天国と地獄》は、《ラ・ボエーム》(06年)、《ナクソス島のアリアドネ》(08年)以来3度目の二期会公演となる。ギリシア神話のパロディであるこの作品について、「ギリシア悲劇の時代も今も、悩むところや感動するところは全然変わっていない。2500年くらいでは人間は変わらないと思うのです。変わらない人間の根源をうまく引き出せればと思います」と話す。「二期会の皆さんは非常にチャレンジング。《天国と地獄》では、相手役とのやり取りの中で、自分ではコントロールできないような新しい声に出会ってもらいたい」。
役のキャラクターや声質に応じて、若手もベテランも綯い交ぜにして彩り豊かなメンバーでキャスティングができるのは、2700名の声楽家が所属する東京二期会ならではの強みだ。とりわけ個性的な人物が多く登場するオペレッタ公演ではそのメリットが遺憾なく発揮されるに違いない。そして、今回の《天国と地獄》のキャスティングを見てみると、同じ役でもまったく違う個性をもった歌手が配されている。それがいったいどのように舞台の上に結実していくのか、両組の違いにも注目したい。
中でも、今回本サイトで取り上げるのは、オルフェ役の又吉秀樹と山本耕平。次代を担う若きテノールの先頭を駆ける二人だ。又吉と山本は、東京藝術大学入学時からの同期で、ともに「ライバル」と公言してはばからない。そして同時に「いつか二期会でW主演を」と誓いあった仲でもある。二期会の主演デビューは又吉が14年9月公演《イドメネオ》題名役であったのに対し、山本はそれより7ヵ月だけ早く同年2月公演《ドン・カルロ》題名役。そして、今回が誓いどおりのW主演となった。
後日掲載の二人のインタビューでは、学生時代の思い出から、今日にいたるまでの歩み、そして本公演にむけての意気込みを聞いた。日生劇場で二人の「声」を聴く前に、二人の「言葉」にもご期待されたい。
【Information】
ジャック・オッフェンバック生誕200年記念
東京二期会オペラ劇場《天国と地獄》(新制作)
(全2幕・日本語訳詞上演・歌唱部分のみ日本語字幕付き)
2019.11/21(木)18:30、11/22(金)14:00、11/23(土・祝)14:00、11/24(日)14:00 日生劇場
指揮:大植英次
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
演出:鵜山 仁
装置:乘峯雅寛
衣裳:原 まさみ
照明:古宮俊昭
振付:新海絵理子
配役
プルート:上原正敏(11/21,11/23) 渡邉公威(11/22,11/24)
ジュピター:大川 博(11/21,11/23) 三戸大久(11/22,11/24)
オルフェ:又吉秀樹(11/21,11/23) 山本耕平(11/22,11/24)
ジョン・スティクス:吉田 連(11/21,11/23) 相山潤平(11/22,11/24)
マーキュリー:升島唯博(11/21,11/23) 児玉和弘(11/22,11/24)
バッカス:峰 茂樹(11/21,11/23) 志村文彦(11/22,11/24)
マルス:野村光洋(11/21,11/23) 的場正剛(11/22,11/24)
ユリディス:愛もも胡(11/21,11/23) 高橋 維(11/22,11/24)
ダイアナ:小村朋代(11/21,11/23) 廣森 彩(11/22,11/24)
世論:押見朋子(11/21,11/23) 塩崎めぐみ(11/22,11/24)
ヴィーナス:山本美樹(11/21,11/23) 中野瑠璃子(11/22,11/24)
キューピッド:吉田桃子(11/21,11/23) 熊田アルベルト彩乃(11/22,11/24)
ジュノー:醍醐園佳(11/21,11/23) 三本久美子(11/22,11/24)
ミネルヴァ:髙品綾野(11/21,11/23) 吉田愼知子(11/22,11/24)
合唱:二期会合唱団
http://www.nikikai.net/lineup/orphee2019/
▼指揮:大植英次 インタビュー「愉しくなければオペレッタじゃない」
http://www.nikikai.net/enjoy/vol318.html
▼演出:鵜山仁 インタビュー「ノイズいっぱいのライブの面白さを」
http://www.nikikai.net/enjoy/vol318_02.html