東京二期会がこの秋に上演する新制作のオペラ《蝶々夫人》の制作発表会が、6月12日、東京・上野の東京文化会館で行われた。このプロダクションは、2019年10月3日、世界に先駆けて東京でワールド・プレミエが行われ、その後、ザクセン州立歌劇場とデンマーク王立歌劇場、そしてサンフランシスコ・オペラで上演されることになっている。まさに「日本が世界に向けて発信するオペラ」であり、日本のオペラ界にとってもきわめて重要なプロダクションとなるだろう。会見には、5月に前立腺癌の手術をしたばかりの演出家・宮本亞門と、衣裳デザインを手がける髙田賢三が登場。その意気込みや、オペラにかける思いを語った。
(2019.6/12 東京文化会館 撮影:近澤 幸司)
そんな宮本が衣裳デザインにとオファーしたのが、16年にフランス政府からレジオンドヌール勲章シュヴァリエ位を授与された世界的デザイナーである髙田賢三。髙田は、1999年にパリ・オペラ座で行われたロバート・ウィルソン演出の《魔笛》の衣裳を手がけて話題となったが、今回は彼の日本での初めてのオペラ参加となる。
「ヨーロッパではヴァレンチノやラクロワなど、著名なデザイナーがオペラの衣裳を手がけています。亞門さんからお話をいただいたとき、《蝶々夫人》はオペラの原点でもあり、ぜひやってみたいと思いました。日本の美を大切にしつつ、新しくモダンな要素もみせたいので、透ける素材を使ったり、着物も染めではなく織物にしたりといった工夫を重ねています」
日本人が手がける《蝶々夫人》というと、とかく「着物の所作」など「日本人ならでは」の面がクローズアップされがちだが、宮本はその点についても注意を払う。
「蝶々さんは第1幕でキリスト教に改宗してくる。つまり彼女はアメリカ人になりたかったんですね。そういう意味では、例えば2幕では洋服で登場してもいいのではないか。スタッフもインターナショナルなチームですし、何より現代の日本に生きている我々が作り出すのですから、新たな視点を入れていきたいと思っています」
指揮はイタリアの若き鬼才、アンドレア・バッティストーニ。実は《蝶々夫人》をきちんと指揮するのはこれが初めてになるそう。そしてタイトルロールは、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場にも出演した森谷真理、そして昨年に続き今年の7月にもプッチーニ・フェスティバル(イタリア、トスカーナ州トッレ・デル・ラーゴ湖畔)で同役を歌うことが決定した大村博美のダブルキャストとなる。スタッフ、キャストともに最高のメンバーを揃え、東京二期会が総力を挙げて挑む《蝶々夫人》。この秋最大の話題作になるに違いない。
文・室田尚子
【Information】
東京二期会 オペラ《蝶々夫人》(新制作)
2019.10/3(木)18:30、10/4(金)14:00、10/5(土)14:00、10/6(日)14:00
東京文化会館
2019.10/13(日)15:00 よこすか芸術劇場
指揮:アンドレア・バッティストーニ
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
演出:宮本亞門
装置:ボリス・クドルチカ
衣裳:髙田賢三
蝶々夫人:森谷真理(10/3,10/5,10/13) 大村博美(10/4,10/6)
スズキ:藤井麻美(10/3,10/5,10/13) 花房英里子(10/4,10/6)
ケート:成田伊美(10/3,10/5,10/13) 田崎美香(10/4,10/6)
ピンカートン:樋口達哉(10/3,10/5,10/13) 小原啓楼(10/4,10/6)
シャープレス:黒田 博(10/3,10/5,10/13) 久保和範(10/4,10/6)
ゴロー:萩原 潤(10/3,10/5,10/13) 高田正人(10/4,10/6)
ヤマドリ:小林由樹(10/3,10/5,10/13) 大川 博(10/4,10/6)
ボンゾ:志村文彦(10/3,10/5,10/13) 三戸大久(10/4,10/6)
神官:香月 健(10/3,10/5,10/13) 白岩 洵(10/4,10/6)
東京文化会館公演 http://www.nikikai.net/lineup/butterfly2019/
横須賀公演 http://www.nikikai.net/lineup/butterfly2019_yokosuka/