東京二期会が7月11日、2019/20シーズンラインアップを発表した。記者会見には、東京二期会の韮澤弘志 新理事長、山口毅 常務理事兼事務局長のほか、バリトンの宮本益光が登壇した。
(2018.7/11 東京文化会館 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)
韮澤弘志 新理事長は就任にあたり、「これまで文化庁や新国立劇場常務理事などでの経験を活かし、二期会の発展のために全力を尽くしたい。現在、オペラをとりまく状況は厳しいものがあるが、二期会の本来の使命を認識するとともに、今後どのような役割を果たしていくべきかを明確にしていきたい」と抱負を語る。
2019/20シーズンのテーマは「さまざまな愛のかたち」。上演予定作品は6演目。すでに発表されている《金閣寺》(19年2月)の他、《エロディアード》(同4月)、《サロメ》(同6月)、《蝶々夫人》(同10月)、《天国と地獄》(同11月)、《椿姫》(20年2月)と、全演目が新制作で上演される。
宮本亜門演出の《金閣寺》は、フランス国立ラン歌劇場との共同制作で、今年3月21日にストラスブールでプレミエを迎え、ミュルーズと計7回上演されたもの。19年2月に満を持しての日本上演となる。東京公演にあたってはフランス公演時に行われたカットの実施を変更、衣裳も一部変更される予定とのことで、日本バージョンでの上演となる。溝口役は、宮本益光(2/22,24)と与那城敬(2/23)が務め、フランス上演時に出演した志村文彦(道宣和尚役)、嘉目真木子(女役)の出演も決まっている(両名とも2/22,24出演)。宮本益光は15年に神奈川県民ホールで上演された下野竜也指揮、田尾下哲演出の《金閣寺》でも溝口を演じているが、今回のプロダクションに出演するにあたり、次のように語った。
「日本人が書いた文学や音楽作品はいまや当たり前のように西洋で受け入れられていますが、オペラ作品となると即答できる演目は少ない。黛さんの《金閣寺》は日本文化と西洋の語法との融合が大胆かつ緻密な形で成功しており、西洋における日本文学の評価とあいまって、さらに高い評価を得られる作品ではないかと思う。また我々が発信していくことに意義がある」
また溝口役については「宮本亜門さんの《金閣寺》は、溝口が自身を俯瞰する演出が特徴的。溝口は音楽家としての存在意義を問う上でうってつけの役です。自身のコンプレックスや家庭環境から対峙し、そこからの解放として金閣寺を燃やす行為にいたるまでをいかにして演じるか、そこが役作りの基礎になっている。新シーズンその他のラインアップも魅力的な演目が続くので、その第1弾となる《金閣寺》を成功させたい」と意気込む。
指揮は現在32歳のマキシム・パスカル。パリ・オペラ座やミラノ・スカラ座、ベルリン州立歌劇場などでデビューを飾っている若手指揮者。現代音楽に造詣が深く、また三島由起夫作品をフランス語で愛読しており、《金閣寺》は自ら「指揮をしたい」と語ったという。
《サロメ》は、ハンブルク州立歌劇場との共同制作公演。指揮は、さきごろ読売日本交響楽団の次期常任指揮者への就任が発表された、セバスティアン・ヴァイグレを迎える。今回の上演は就任記念公演の一環として指揮を執る。演出は、16年の《トリスタンとイゾルデ》で好評を博したヴィリー・デッカー。
ザクセン州立歌劇場との共同制作公演 《蝶々夫人》は、アンドレア・バッティストーニの指揮に、演出は宮本亜門、装置はボリス・クドルチカが担当し、日本でプレミエを迎える。20年の春にドレスデンで上演され、その後のレパートリー化も予定されているという。
《天国と地獄》は歌唱、台詞ともに日本語訳詞で上演。指揮は13年の《こうもり》でもタクトを振った大植英次。演出は08年の《ナクソス島のアリアドネ》以来、11年ぶりの登場となる鵜山仁。
新シーズン最後を締めくくる《椿姫》は、日本デビューとなるジャコモ・サグリパンティの指揮。バイエルン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、パリ・オペラ座で活躍している若手指揮者で、16年にインターナショナル・オペラ・アワード最優秀若手指揮者を受賞した逸材だ。演出は現在調整中だが、再演をふまえ、より長く楽しんでもられるプロダクションにすると示唆した。
《エロディアード》以降のキャスト、調整中の演出については、随時二期会ウェブサイトで発表される予定。
東京二期会http://www.nikikai.net/