今春、ジュール・マスネのオペラが立て続けに上演される。3月19日に初日を迎えた新国立劇場《ウェルテル》(指揮:ポール・ダニエル、演出:ニコラ・ジョエル)に続いて、4月27日、28日にはBunkamuraオーチャードホールにて東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ《エロディアード》が上演される。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したジュール・マスネ。《ウェルテル》や《マノン》など美しい旋律に彩られたリリック・オペラがその代表作だが、《ウェルテル》よりも10年ほど前に書かれた《エロディアード》は、フランス伝統のグランド・オペラの様式で構成されており、音楽もより劇的だ。 巨匠ミシェル・プラッソンが起こす“奇跡”!?今回の指揮はミシェル・プラッソン。85歳を迎えた今もなお精力的に指揮活動をしている。昨年11月にはロッテルダム・フィル、今年1月にもスウェーデン放送響の演奏会に客演。ドビュッシーやサン=サーンスの交響楽作品を指揮したほか、昨年2月ジュネーブ大歌劇場において、やはりマスネの《ウェルテル》を8回も指揮した。東京二期会には、2010年ベルリオーズの《ファウストの劫罰》、13年オッフェンバックの《ホフマン物語》に続いて、6年ぶり3度目の登場となる。
フランス音楽最高峰の巨匠を迎える東京二期会の歌手陣も充実といってよいだろう。タイトルロールには、類まれな日本のドラマティック・ソプラノ板波利加(4/27)と、16年の東京二期会《トリスタンとイゾルデ》イゾルデの名唱以来ブレイク中のメゾソプラノ池田香織(4/28)。二人をはじめ、サロメ役の髙橋絵理(4/27)、國光ともこ(4/28)、ジャン役の城宏憲(4/27)、渡邉公威(4/28)、エロデ役の小森輝彦(4/27)、桝貴志(4/28)、ファニュエル役に妻屋秀和(4/27)、北川辰彦(4/28)が配された。
今、《エロディアード》をプラッソンの指揮で聴けるという稀少な機会は、世界においてもBunkamuraオーチャードホールのこの2日間だけ。奇跡のような演奏に出会えることに期待したい。
〜オペラ《エロディアード》のものがたり〜
紀元前30年頃のエルサレム。王宮の舞姫サロメは、荒野で出会った美しい預言者ジャンの虜になってしまう。熱烈に愛を語るサロメ。しかし、男女の愛を拒絶し続けるジャンに想いは届かない。
王妃エロディアードは夫エロデがサロメに執心する姿を見て苦悩する。占星術師の予見により、サロメが、かつて自らが捨てた娘であると知るエロディアード。一方、サロメに迫るが、頑なに拒絶されるエロデ。
ある日、エロデは、民衆を扇動した罪で咎められたジャンの命を救おうとするが、サロメの愛する人物がジャンであると知り、嫉妬から死刑を宣告してしまう。
牢獄で死を待つジャンは、サロメへの思いを募らせる。運命を共にすることを願うサロメを振り払い、死刑場へ向かうジャン。サロメは、王妃エロディアードに助命を嘆願するが、すでに時は遅く・・・
(ギュスターヴ・フロベール『三つの物語』より)
【公演情報】
東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ
《エロディアード》(新制作/セミ・ステージ形式上演)
2019年4月27日(土)17:00、4月28日(日)14:00
Bunkamuraオーチャードホール
原作:ギュスターヴ・フロベール『三つの物語』
台本:ポール・ミーリエおよびアンリ・グレモン
作曲:ジュール・マスネ
舞台構成:菊池裕美子
映像:栗山聡之
照明:大島祐夫
舞台監督:幸泉浩司
合唱:二期会合唱団
指揮:ミシェル・プラッソン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
●配役(4月27日/28日)
ジャン:城 宏憲/渡邉公威
エロデ:小森輝彦/桝 貴志
ファニュエル:妻屋秀和/北川辰彦
ヴィテリウス:小林啓倫/藪内俊弥
大祭司:倉本晋児/水島正樹
寺院内からの声:前川健生/吉田 連
サロメ:髙橋絵理/國光ともこ
エロディアード:板波利加/池田香織
バビロニアの娘:金見美佳/徳山奈奈
●ご予約・お問合せ
二期会チケットセンター:03-3796-1831
東京二期会
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