【ゲネプロレポート】藤原歌劇団《蝶々夫人》本日開幕!

ひたむきに愛を信ずる蝶々さんを演じる迫田美帆が光る

 藤原歌劇団の《蝶々夫人》は、1984年以来30年以上もずっと上演し続けてきた伝統的なプロダクション。演出は故・粟國安彦で、歌舞伎や新派にも通じる「日本の芝居」の要素を強く打ち出した舞台は、日本における《蝶々夫人》の「代表版」の名にふさわしい。公演日は4月27日、28日の2日間。28日出演の迫田美帆&藤田卓也組の最終総稽古(ゲネラル・プローベ)を取材した。
(2019.4/26 テアトロ・ジーリオ・ショウワ 取材・文:室田尚子 Photo:Lasp Inc.)



 27日組のキャストが蝶々さんに小林厚子、ピンカートン笛田博昭、シャープレス牧野正人、スズキ鳥木弥生という実力派ベテラン勢で固められているのに対し、28日組はフレッシュな若手中心。中でも、タイトルロールの蝶々さんを歌うのは、これが藤原歌劇団デビューとなる迫田美帆。透明感のあるよく通る美声の持ち主で、さらに演技がとても上手い。蝶々さんは全編ほぼ出ずっぱりで「ソプラノ殺し」ともいわれる役だけあって、スタミナと力のあるソプラノが歌うことが多いが、そのためにしばしば迫力がありすぎて「愛を信じる15歳の少女」には見えないことがあるが、迫田の蝶々さんは、まさに「一途にひたむきに愛に生きる15歳の少女」。第1幕の登場シーンから初々しく、周囲の女性たちに無邪気に結婚を自慢する様子も愛らしい。ピンカートンと二人きりで歌う愛の二重唱では、恥じらいとよろこびが控えめな仕草からこぼれ落ちる。



 特筆すべきは、第2幕の前半、ピンカートンの船が入港するまでのシーンを、決して悲しみに沈んだ女性として演じなかったこと。ピンカートンの愛を微塵も疑っていないからこそ、彼女はスズキに〈ある晴れた日に〉を歌うのであり、ヤマドリの求婚も堂々と断ることができるのだ。だから、ここでの蝶々さんには悲壮感が漂っていてはいけない。むしろ無邪気に、ひたむきに愛を信じている明るさと強さが感じられるべきであり、迫田の蝶々さんはまさにそのような女性だった。これは演出(再演演出は馬場紀雄)の手腕かもしれない。


 ピンカートンを演じるのは藤田卓也。高音の張りと艶が見事なテノールである。第1幕の愛の二重唱といい、第2幕〈さらば愛の巣よ〉といい、ピンカートンの歌が良ければ良いほど「軽薄なイケメン」っぷりが蝶々さんの悲劇を際立たせる仕掛けなのでテノールにとっては損な役だが、藤田のイケメン加減には、女性ならついクラっときてしまうのではないか。もちろん、第1幕など「軽薄さ」もちゃんと表現している。理想的なピンカートンだ。

 シャープレスに抜擢された市川宥一郎は若手の有望株だが、堂々とした演技と歌いぶりはベテラン顔負け。スズキの但馬由香も深みのある歌唱で舞台を支えている。第2幕の蝶々さんとの〈花の二重唱〉は大きな聴きどころである。


 本公演は、2009年から開催されている川崎・しんゆり芸術祭〈アルテリッカしんゆり〉のオープニング公演にもなっている。日本の美とプッチーニの流麗な音楽が見事に調和した《蝶々夫人》。ゴールデンウィークのスタートを飾るにふさわしいオペラといえるだろう。指揮は鈴木恵里奈、管弦楽はテアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ。



藤原歌劇団《蝶々夫人》

2019.4/27(土)、4/28(日)各日15:00
テアトロ・ジーリオ・ショウワ

総監督:折江忠道

指揮:鈴木恵里奈
演出:粟國安彦

再演演出:馬場紀雄
振付:立花寳山

●キャスト
蝶々夫人:小林厚子(4/27) 迫田美帆(4/28)
ピンカートン:笛田博昭(4/27) 藤田卓也(4/28)
シャープレス:牧野正人(4/27) 市川宥一郎(4/28)
スズキ:鳥木弥生(4/27) 但馬由香(4/28)
ゴロー:松浦 健(4/27) 井出 司(4/28)
ボンゾ:豊嶋祐壹(4/27) 田島達也(4/28)
ヤマドリ:泉 良平(4/27) 柴山昌宣(4/28)
ケイト:古澤真紀子(4/27) ?村 恵(4/28)
神官:立花敏弘(両日)

合唱:藤原歌劇団合唱部
管弦楽:テアトロ・ジーリオ・ショウワ・オーケストラ

問:日本オペラ振興会チケットセンター03-6721-0874
https://www.jof.or.jp/performance/1904_butterfly/