ウィーン・オペレッタの超人気作『メリー・ウィドウ』

舞台はパリ、官能的な魅惑にあふれた
お洒落な大人の男と女のためのオペレッタ。
ウィーン・オペレッタの超人気作《メリー・ウィドウ》

Photos:Dimo Dimov / Barbara Pálffy / Volksoper Wien

Photos:Dimo Dimov / Barbara Pálffy / Volksoper Wien

 レハール作曲の《メリー・ウィドウ》は、《こうもり》とならぶウィーン・オペレッタの超人気作品。1905年にウィーンで初演されると、その評判はまたたく間に世界中にひろがり、20世紀でもっとも成功した音楽劇になった。英訳のタイトルで呼ばれるということからも、その人気がドイツ・オーストリアだけのものではなく、まさにグローバルなものであることがわかる。
 舞台は初演当時、つまりベル・エポックの時代のパリ。バルカン半島の架空の小国ポンテヴェドロのパリ駐在大使館員でキャバレー〈マキシム〉に通いづめの伊達男ダニロと、同じ故国で莫大な遺産を相続してパリに遊びにきた「メリー・ウィドウ(陽気な未亡人)」ことハンナの、ひと筋縄ではいかない恋のなりゆきが物語の本筋だ。ふたりはかつて故国で愛し合いながらも結ばれず、いまも互いに心惹かれつつも意地を張り合い、ストレートに愛を打ち明けることができない。このちょっとむずかしいメイン・カップルに、よろめきがちな若い大使夫人と彼女に迫る粋なパリ男とのもうひと組のカップルがからんで、ハラハラ・ドキドキのラブコメディが展開する。
 話のおもしろさも第一級だが、レハールの音楽が流麗かつ甘美そのもの。パリの粋な雰囲気が全編にあふれ、バルカン地方の素朴な歌の響きや民族色豊かな踊りもたいへん魅力的だ。物語はウィーンとは無関係だが、そこはやはりウィーン・オペレッタ、ワルツの曲もたっぷり盛り込まれている。名曲「メリー・ウィドウ・ワルツ」をはじめダニロが歌う「マキシムの歌」、ハンナが歌う「ヴィリアの歌」、妻や恋人にやられっぱなしの男たちが思う存分ウップン晴らしをする「女行進曲」、ダニロが昔話にこと寄せてハンナへの熱い思いを打ち明ける「王子と王女の物語」…。どれも心奪われる歌ばかり。そして最後には、大使夫人がリードして〈マキシム〉の踊り子たちがフレンチ・カンカンを踊りまくる最大のクライマックスが用意されている。まさに心を蕩けさせる官能的な魅惑にあふれた、じつにお洒落な大人の女と男のためのオペレッタだ。
文:田辺秀樹(音楽評論家)

フランツ・レハール作曲
《メリー・ウィドウ》
指揮:アルフレート・エシュヴェ
演出:アルトゥーロ・マレッリ
5月26日(木) 6:30p.m.
5月27日(金) 6:30p.m.
5月28日(土) 2:00p.m.
5月29日(日) 2:00p.m.
会場:東京文化会館

■予定される主な配役
ハンナ:ウルズラ・プフィッツナー(5/26, 28)、カロリーヌ・メルツァー (5/27, 29)
ダニロ:マティアス・ハウスマン (5/26, 28)、マルコ・ディ・サピア(5/27, 29)
ヴァランシェンヌ:ユリア・コッチー(5/26, 28)、マーラ・マシュタリール(25/7, 29)
カミーユ・ド・ロション:ヴィンセント・シルマッハー (5/26, 28)、メルツァード・モンタゼーリ (5/27, 29)
ニェーグシュ:ロベルト・マイヤー
ほか

*表記のキャストは2015年10月25日現在の予定です。

Photos:Dimo Dimov / Barbara Pálffy / Volksoper Wien

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