ヤマハホール 10周年コンサートシリーズから


人気ピアニストや若きディーヴァも登場

 東京・銀座のヤマハホールは、長く音楽の発信地として親しまれてきた同店舗ビルの7〜9階にあり、国内外の演奏家たちが注目すべきコンサートを行っている。2010年春にリニューアル・オープンした現在のホールは333席を有し、高い天井の空間によって生まれる豊かなアコースティックな響きが特徴だ。特に1階席は音楽家の存在がとても近く感じられると好評。リニューアル10周年となる今年も、さまざまなコンサートが予定されている。リニューアル記念日である2月26日には、ジャズやクラシックのボーダーを取り払ったピアニストの小曽根真が登場し、記念日にふさわしいピアノ・ソロ・ライヴを行う(完売)。

 その1週間前には、国内外のオペラ公演等で注目を浴びるメゾソプラノの脇園彩が、パリの香りを漂わせるアーンや独特の深みがあるベルリオーズの歌曲、さらにはロッシーニの作品などを聴かせてくれる(2/19)。多彩な表情を描き出す歌声はもちろん、ステージでの振る舞いなどにも魅了され、声楽ファンにとっては幸福な一夜となることだろう。邸宅の広いサロンに迎えられて歌を聴くような体験ができそうである。

管楽器の超絶技巧と芳醇な響き

 3月になると管楽器ファン注目のコンサートが続く。まずは、次々と新機軸のコンサートを行ってきたサクソフォンの上野耕平が、全曲日本の作曲家によるリサイタルを。盟友といえる作・編曲家の山中惇史(ピアノ)と石若駿(パーカッション)を迎え、サクソフォンにとってはスタンダード作品になっている吉松隆の「サイバーバード協奏曲」や、上野のために書かれた藤倉大作品などを演奏する(3/7)。この日だけで楽器の可能性が拡大するのではないかという勢いだ。

 続いてNHK交響楽団の首席トランペット奏者である菊本和昭が音頭をとり、N響ほかの仲間たちとともに金管アンサンブルのコンサート〈ロシアン・ブラス・ナイト!〉を(3/11)。輝かしくパワフル、そして繊細なブラス・サウンドは、全吹奏楽ファンおよび楽器体験者なら必聴ものだ。出演者の一人であるパーカッショニストの竹島悟史が、ムソルグスキーの「展覧会の絵」やショスタコーヴィチの「祝典序曲」をアイディア豊かにアレンジ。エヴァルドやベーメといった作曲家による人気アンサンブル作品もあわせ、豊かな響きがホールいっぱいにあふれる一夜となる。

 このほかにも、徳永二男、堤剛、練木繁夫というベテラン奏者によるピアノ三重奏シリーズ第6弾として、ブラームスの第1番やベートーヴェンの「幽霊」ほか、名曲プログラムを円熟の演奏で堪能できる〈珠玉のピアノトリオ・コンサート〉も(2/22、完売)。その堤らの薫陶を受けたチェロの宮田大、そして若い世代のホープであるウェールズ弦楽四重奏団が共演し、シューベルトの弦楽五重奏曲やJ.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲第3番」をじっくりと聴かせる〈宮田大と仲間たち〉は、室内楽ファンにとっては夢のような一夜になるだろう(3/16、完売)。クラシック演奏家との共演も多いフラメンコ・ギタリストの沖仁が、カホンほかパーカッションを演奏する伊集院史朗とのデュオで縦横無尽に楽器を操る〈フラメンコギターコンサート〉も、寒さを熱気で吹き飛ばすようなひとときだ(3/14)。

 4月以降も注目のラインナップが並ぶであろうヤマハホールのアニヴァーサリー・シーズン。まだホールへ足を運んでいない方は、ぜひお目当ての演奏家やコンサートを狙って!
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2020年2月号より)

問:ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171 
https://www.yamahaginza.com/hall/
※各公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。