ダイナミックにして繊細な感性に彩られたピアニズム

 ロン=ティボー国際音楽コンクール第2位、ルービンシュタイン国際ピアノコンクール第3位、そして浜松国際ピアノコンクール優勝と、名だたる国際コンクールで上位入賞を果たし、着実なキャリアを重ねてきたイリヤ・ラシュコフスキー。彼は減衰楽器であるピアノで歌うような表現をその特長の一つとする「ロシアン・ピアニズム」を身につけて、繊細さと大胆な表現を巧みに切り替え、スケールの大きな音楽を作り上げていく。そうして生み出される演奏は作品のもつ本来の美しさを丁寧に導き出しながら、随所に新しい魅力の輝きを加えていくのである。
 今回は、彼が得意とするショパンのソナタやバラードに、リストの「巡礼の年」からの1曲やロ短調ソナタというプログラム。作品のドラマ性、精神性を力強く浮き上がらせていく彼の巧みな表現力をとことん堪能できるだろう。親密な空間の中で音が豊かに響いていくヤマハホールで、自在に変化していくラシュコフスキーの奏でる音色を存分に味わいたい。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2017年10月号より)

2017.10/14(土)14:00 ヤマハホール
問:ヤマハ銀座ビルインフォメーション03-3572-3171
http://www.yamahaginza.com/hall/