ジュリアード弦楽四重奏団 来日公演への期待
文:萩谷由喜子(音楽評論家)
ニューヨークのジュリアード音楽院といえば、世界中から畏敬の眼差しをもってみつめられている名門ブランドだ。1905年、ヨーロッパの一流音楽家たちを招いて創設されたこの音楽教育機関は、その後莫大な資産を遺贈した篤志家の名を戴いて現名称となり、優れた教授陣と画期的なカリキュラムによって多くの国際的演奏家を輩出してきた。
1946年、同音楽院の教授陣によって結成されたのが、今回来日するジュリアード弦楽四重奏団だ。すでに結成72年。ヨーロッパの老舗カルテットに比肩しうる歴史がある。
結成70年の2016年にも来日して、6月10日に紀尾井ホールで、モーツァルトの第19番『不協和音』、ワーニックの第9番の日本初演、ドビュッシーの弦楽四重奏曲を聴かせてくれたが、国も時代も異なる3曲の個々の魅力をあますところなく伝えきったその快演に心から喝采を贈ったのを覚えている。
たしか、そのシーズン一杯で最古参メンバーだったチェロのジョエル・クロスニックが勇退して次シーズンから女性チェリストのアストリッド・シュウィーンが参加し、アグレッシヴなヴァイオリンを弾いていたファースト・ヴァイオリンのジョセフ・リンが今春までのシーズンで退団したため、この秋の新シーズンからは、女性のアレタ・ズラがファースト・ヴァイオリン席に坐る。というわけで、2年前の公演時とは、上と下のメンバーが交代しているが、中声を支えるセカンド・ヴァイオリンのロナルド・コープスとヴィオラのロジャー・タッピングは元気に在籍している。二人の大ベテランが骨格を固めてくれるので、この四重奏団ならではの、水も漏らさぬ緊密なアンサンブルは健在なはずだ。さらにそこに、アレタ・ズラがどんな音色とフレージングで上声を歌ってくれるか、シュウィーンがどのように土台を構築してくれるのかを聴く楽しみが加わった。
新体制で演奏するのは、F.J.ハイドンの作品77-2ヘ長調『雲がゆくまで待とう』、バルトークの第3番、ドヴォルザークの第11番の3曲。前回同様、古典派から20世紀へ飛び、最後に19世紀作品という、彼ら得意のJターン・プログラムである。
古典の構築美、研ぎ澄まされた絶対音楽の極致、そして一転して、溢れんばかりの旋律美と民族情緒という、3作3様の聴きどころを彼らがどのように伝えてくれるのか、今から楽しみで堪らない。
■珠玉のリサイタル&室内楽
ジュリアード弦楽四重奏団
2018.10/24(水)19:00 ヤマハホール
出演:
ジュリアード弦楽四重奏団
アレタ・ズラ(ヴァイオリン)
ロナルド・コープス(ヴァイオリン)
ロジャー・タッピング(ヴィオラ)
アストリッド・シュウィーン(チェロ)
演奏曲目:
F.J.ハイドン/弦楽四重奏曲 ヘ長調 「雲がゆくまで待とう」 Op.77-2, Hob.Ⅲ-82
B.バルトーク/弦楽四重奏曲 第3番
A.ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲 第11番 ハ長調 Op.61, B.121
※都合により出演者、曲目が変更になる場合がございます。予めご了承ください。
●料金
全席指定:6,000円
●申込み方法:チケットぴあ
・TEL 0570-02-9999 ※座席選択不可
・Pコード:110-701 ※発売日11:00より座席選択可能