中国の大スターと日本の老舗が世界を繋ぐ

 これは友好的にも音楽的にも注目すべき公演だ。日中国交正常化45周年を記念して東京フィルの特別演奏会が開催される。尖閣問題で公演が中止された40周年の思いも込めて実現し、音楽で心を繋ぐ本公演は、世界が緊迫する今きわめて意義深いが、内容にも重要な意味がある。
文:柴田克彦

リュー・ジァ

 最大のポイントは指揮のリュー・ジァだ。音楽家の両親のもと上海に生まれた彼は、現在50代前半。ベルリン芸術大学留学中にペドロッティ国際指揮者コンクールで優勝後、アレーナ・ディ・ヴェローナやトリエステ・ヴェルディ劇場等のシェフを歴任し、イタリアの歌劇場におけるアジア人初の音楽監督となった。このほか、バイエルン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、シカゴ響、ゲヴァントハウス管等、欧米の一流どころに多数客演。ここ10年は、中国国家大劇院のオペラ監督および同楽団の首席指揮者、マカオ管の音楽監督を務めながら、国内での教育や聴衆の育成に力を注いでいる。
 これほどの経歴=実力を持つ彼が、初めて日本のオーケストラを指揮するだけでも注目に値するが、何せ東京フィルはオペラ演奏の強固な伝統を有し、オペラ指揮者の意を汲む力は日本随一。ゆえに今回は、本場の歌劇場も認めたリュー・ジァのドラマ性や歌心が最大限に発揮される舞台であり、その点が一層興味を煽る。

セルジォ・バイエッタ

 もう1つ、ピアノのセルジォ・バイエッタの本格的な日本デビューにも熱視線を注ぎたい。東京フィルの首席指揮者バッティストーニと同じヴェローナ生まれで、その盟友である彼は、ソロや室内楽活動はもとより、デヴィーア、ヌッチ、カレヤほか多くの大歌手と共演している。つまり彼もまた歌心が横溢した奏者だけに、今回の共演が注目される。
 主演目は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番とチャイコフスキーの交響曲第5番。両名作ならば、身を置くだけで濃厚な美旋律やロマンを満喫できるし、二人の個性を知るにも相応しい。
 日中友好の響きが世界に繋がる本公演。一夜限りの貴重な機会を逃してはならない。

日中国交正常化45周年記念公演

東京フィルハーモニー交響楽団特別演奏会

2017年11月24日(金)19:00 東京オペラシティコンサートホール
指揮:リュー・ジァ(呂嘉)
ピアノ:セルジォ・バイエッタ

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番
チャイコフスキー/交響曲第5番

料金:S6,000 A4,500 B3,500 C2,000

主催:日中国交正常化45周年記念公演実行委員会
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522(平日10:00〜18:00)