【10月定期】プレトニョフのオール・ロシア

 ミハイル・プレトニョフがこの定期で取り上げるのは、革命以前のロシア音楽だ。それも小品から歌劇の抜粋まで、「近代ロシア音楽の父」グリンカから20世紀初頭まで活躍したリャードフまで、規模も性格も異なる作品群が約半世紀の時間を超えて並ぶ様はちょっとした展覧会の様相だ。
 なかでも、かつてこの組合せで「不死身のカッシェイ」を演奏したリムスキー=コルサコフの歌劇からの組曲は注目だ。華麗な管弦楽曲が人気だが、彼は多数の歌劇を残しており、今回はその後期の作品群からの組曲を演奏する。
 ボロディンの交響詩「中央アジアの草原にて」が演奏されることにも注目したい。短いけれど独特の雰囲気ある佳曲を、彼の演奏で聴けるのは実に喜ばしい。そして、ここにリャードフの小品が並ぶのは彼がロシア人であり、またピアニストとしてその作品の真価を深く理解すればこそだろう。彼の知性、多面的な活躍あってこのプログラムが編まれたわけである。
 もしかすると、だが。
 後にリャードフがある若いロシア人の出世のきっかけとなったことを思えば、このプログラムに隠されたテーマは「バレエ・リュスに至る道」なのかもしれない。そのロシア人とはもちろん、イーゴリ・ストラヴィンスキーである。

C)上野隆文

C)上野隆文

第897回オーチャード定期演奏会
2017年10月22日(日)15:00
Bunkamuraオーチャードホール

第898回サントリー定期シリーズ
2017年10月23日(月)19:00
サントリーホール 大ホール

指揮:ミハイル・プレトニョフ

グリンカ:幻想曲カマリンスカヤ 7’00
グリンカ:幻想的ワルツ 6’00
グリンカ:歌劇「皇帝に捧げし命」よりクロコヴィアク 5’00
ボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」 9’00
リャードフ:交響詩「魔法にかけられた湖」 8’00
リャードフ:交響詩「キキモラ」 8’00
リャードフ:交響詩「ババヤガ」 4’00

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リムスキー=コルサコフ:歌劇「雪娘」組曲 13’00
リムスキー=コルサコフ:歌劇「見えざる町キーテジと聖女フェブローナの物語」組曲 20’00
リムスキー=コルサコフ:歌劇「皇帝サルタンの物語」組曲 20’00

問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522(平日10:00〜18:00)