アンドレア・バッティストーニが語る 東京フィルとの『新しい景色』(1)


『新しい景色をみたい』をテーマに開幕する東京フィルの2021シーズン。首席指揮者アンドレア・バッティストーニは1月・5月・11月の定期演奏会と、人気シリーズ「午後のコンサート」に登場します。
昨年2020年はマエストロが暮らすイタリアでも大規模なロックダウンが行われ、多くの劇場やコンサートホールが公演活動の中断を余儀なくされました。そして、2021年現在も世界中の文化芸術活動は苦境に立たされています。
そのような中でも、「芸術は死なない」と力強い言葉を投げかけてくれたマエストロ。1月、不死鳥『火の鳥』をメインに開幕する東京フィルの2021シーズンに向け、近況と聴きどころをたずねました。

(2020年11月実施のインタビューより)


――この2020年はマエストロの住むイタリアでも大規模なロックダウンが行われました。マエストロはロックダウンの間、どんなことをして過ごしていたのでしょうか?

最初は、家にいてパートナーと余暇時間を「何もしない」で過ごすことの楽しさを再発見していました。
しかし、それから、時間を無駄にしたくないという恐ろしい感覚が芽生え、合唱とオーケストラのための長大な交響曲を作曲し始めました。
それまでの私のスケジュールでは十分な余裕を見つけることができなかったプロジェクトでした。作曲をしたり、それまで知らなかった新しい楽譜を勉強したりと、とてもクリエイティブな時期を過ごしました。
幸いにも知り合いにウイルスに感染した人がいなかったので、しばらくは自分の家の外のことは忘れて、音楽に没頭することができたのです。

ヴェローナの自宅バルコニーで過ごす

愛猫のフリーダと自宅でくつろぐ


――演奏活動ができなくなった生活の中で、どんなことを感じましたか?

大きな喪失感です。それまでは1年のうち、ほぼ毎週のようにお客様の前で演奏することに慣れていました。
今、世界的にライヴ演奏を許可している国はごくわずかしかありません。私の音楽人生で、これが今回のパンデミックで被害を被ったことです。
音楽を作り出す過程で、お客様はアクティブな役割を果たしてくれています。お客様がいることでその空間に特別な緊張感と電流が生まれ、音楽は音楽家やお客様と一体となって呼吸を始めるのです。ライヴが本当に恋しいです。



――今の世界の音楽界の状況をどのように感じているでしょうか。

誰もが慣れない不確かさと、不安と言ってもいいものを感じています。
オーケストラやコンサートマネジメントといった民間の団体が、世界中で大きな危機にさらされています。
大規模なものから小さなものまで、すべての音楽団体が、会場やもてなし方を工夫してお客様の健康を最大限に確保するよう、甚大な努力をしたと思っています。劇場やコンサートホールは今や安全な場所なのです!私たちが経済的に安定した状態で文化的ミッションを継続できるよう、政府は私たちを信頼しなくてはなりません。

Part2へ続く)

【Information】
●1月定期演奏会


第946回サントリー定期シリーズ
2021.1/22(金)19:00開演(18:15開場)
サントリーホール

第947回オーチャード定期演奏会
2021.1/24(日)15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:アンドレア・バッティストーニ(東京フィル 首席指揮者)

― 永遠の時を生きる ―

ラヴェル/『ダフニスとクロエ』第1組曲
ラヴェル//『ダフニスとクロエ』第2組曲
ストラヴィンスキー/バレエ組曲『火の鳥』(1919年版)