東京二期会が2020/21シーズンラインアップを発表

 東京二期会が2020/21シーズンラインアップを発表した。5月30日、記者会見が都内で行われ、東京二期会理事長・韮澤弘志、同常務理事兼事務局長・山口毅、そして、この6月に上演される《サロメ》と10月に上演される《蝶々夫人》両作品で題名役を歌う森谷真理(ソプラノ)、東京二期会幹事長で《蝶々夫人》にシャープレス役としても出演する黒田博(バリトン)が登壇した。
(2019.5/30 東京文化会館 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

左より:山口 毅、韮澤弘志、、森谷真理、黒田 博

 まず韮澤理事長の挨拶から。
「日本は今年、元号が令和に変わり、ラグビーのワールドカップが開かれ、来年にはオリンピック・パラリンピックも開催されます。時代が大きく変わろうとしている。二期会もこの新しい時代のニーズに叶うものを作り上げていきたいと思っています。二期会は“アンサンブル”を大切にし、歌手一人ひとりが他者と切磋琢磨して良いオペラを提供しようと努めてきました。グローバル化する現在こそ、個人を尊重すべき時代で、まさにアンサンブルの姿勢が大切なのです。これからも二期会はオペラ・ファンから初心者の方まで楽しめる内容を提供していきたい」と述べた。

 次に山口事務局長よりラインアップの説明。今回の公演はすべて新制作で、出演する歌手については後日発表となる。
 以下、演目と指揮者、演出家、オーケストラを挙げる。

ヴェルディ《椿姫》(2020.2/19,2/20,2/22,2/23)
指揮:ジャコモ・サグリパンティ 演出:原田諒 管弦楽:東京都交響楽団
サン=サーンス《サムソンとデリラ》(4/25,4/26)。
指揮:準・メルクル 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
※東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ(セミ・ステージ形式)
ベルク《ルル》(7/10,7/11,7/12)
指揮:マキシム・パスカル 演出:カロリーネ・グルーバー 管弦楽:東京交響楽団
ベートーヴェン《フィデリオ》(9/3,9/4,9/5,9/6)
指揮:ダン・エッティンガー 演出:深作健太 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
レハール《メリー・ウィドー》(11/26,11/27,11/28,11/29)
指揮:沖澤のどか 演出:眞鍋卓嗣(たかし) 管弦楽:東京交響楽団
ワーグナー《タンホイザー》(2021.2/17,2/18,2/20,2/21)
指揮:アクセル・コーバー 演出:キース・ウォーナー 管弦楽:読売日本交響楽団
ヘンデルのオペラ作品(5/22,23)
指揮:鈴木秀美 演出:調整中 管弦楽:ニューウェーブ・バロック・オーケストラ・トウキョウ
※二期会ニューウェーブ・オペラ劇場
ヴェルディ《ファルスタッフ》(7/16,7/17,7/18,7/19)
指揮:ベルトラン・ド・ビリー 演出:ロラン・ペリー 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

 山口事務局長は「シーズン最初となる《椿姫》の指揮は、現在ヨーロッパの歌劇場で活躍し、世界から注目を浴びる若手指揮者サグリパンティの日本デビューとなるのが大きな話題です。9月の《フィデリオ》はベートーヴェンの生誕250周年を記念しての上演。指揮のエッティンガーは二期会初登場となります。《ダナエの愛》や《ローエングリン》で高く評価された深作健太の今回の演出に注目してほしいと思います。この《フィデリオ》から2021年のヴェルディの喜劇《ファルスタッフ》までを“苦悩を経て歓喜に至る”というベートーヴェンのモットーになぞらえています。この《ファルスタッフ》はテアトル・レアル、ベルギー王立モネ劇場、フランス国立ボルドー歌劇場との共同制作で、二期会としては2001年以来の上演となります。指揮のビリーと演出のペリーはMETでの公演でも知られるコンビ。ペリー自身も来日し舞台づくりを行います」と見どころ満載のラインアップについて述べた。

山口 毅(東京二期会常務理事兼事務局長)

 この後、歌手の黒田と森谷がコメント。
 黒田は「二期会の《蝶々夫人》と言えば、栗山昌良先生の名演出が知られていて、50年間にわたりこの栗山版を上演してきた歴史があります。私も栗山先生の舞台で歌ったことがありますが、歌手としての根本を教えていただきました。こんどの《蝶々夫人》は宮本亜門さんの演出ですが、これまで亜門さんの舞台ではモーツァルトの4大オペラなどで出演しました。亜門さんの演出には、人間の苦しみや哀しみを感じさせる部分があるように感じます。『今回のシャーブレスは善人ですよね?』と亜門さんに確認すると『勿論ですよ!』との返事が返ってきて安心しました」。 

黒田 博

  
 続いて森谷は「《サロメ》について、先日、セバスティアン・ヴァイグレさんの指揮するオーケストラの演奏(読売日本交響楽団)を聞いたばかり。素晴らしいです。マエストロは《サロメ》を熟知しているよう。1時間40分ほどの短いオペラですが、内容が凝縮されている傑作です。ぜひ多くの人に聴いてもらいたいですね。
 《蝶々夫人》は2017年に二期会でロールデビューした役で、思い出深い作品。亜門さんの今回の上演は、日本で最初に上演してから海外に持っていく、まさに“日本発信”、今後の演奏の規範となるわけですから責任重大ですが、新しい1ページの始まりを感じています。両作品とも、これから期待の若手歌手が出演するので、皆様に発掘していただく意味で“声”をご覧いただきたいと思います」と述べた。

森谷真理

 2022年に創立70周年を迎える二期会は、新時代に向けてロゴを新しいデザインに変更することを発表した。東京二期会と二期会21の2種類のロゴは、二期会会員2700人からの公募で選ばれたもので、二期会の「二」をモティーフとして、二期会の伝統、舞台の形、歌手の口を表し、心をこめて歌う気持ちのハート型になっている。

新しいロゴについて説明する韮澤弘志(東京二期会理事長)

東京二期会
http://www.nikikai.net/
2019-2020 シーズンラインアップ一覧
http://www.nikikai.net/lineup/2019shusai.html