東京春祭チェンバー・オーケストラ

 東京・春・音楽祭の名物のひとつとなっているのが、この東京春祭チェンバー・オーケストラの公演。元・N響コンサートマスター(現・名誉コンサートマスター)の堀正文を中心とした敏腕奏者たちが、室内オーケストラ編成の名曲をたっぷりと聴かせる。

 今年は、リーダー格であるヴァイオリンの堀正文、新日本フィル首席ヴィオラ奏者の篠﨑友美、 N響チェロ奏者の辻本玲、N響首席コントラバス奏者の吉田秀が各パートの主軸を形成し、そこに才能豊かな若手奏者が加わる多彩なメンバー構成。ソロや室内楽でも活躍するトップ奏者と上昇顕著な俊英たちが融合した、本音楽祭でのみ成し得る構成で、例年同様に興趣を盛り上げる。

上段左より:堀 正文、枝並千花、大江 馨、北田千尋、城戸かれん、城所素雅、
中断左より:戸原 直、外園萌香、三輪莉子、篠﨑友美、中 恵菜、山本 周
下段左より:辻本 玲、中条誠一、宮坂拡志、吉田 秀、迫 昭嘉

 プログラムは、モーツァルトの超有名曲《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》で明朗・典雅に開始。次に置かれたバッハのチェンバロ協奏曲第1番では、古典を得意とする練達の名手・迫昭嘉が快活で美しいピアノ・ソロを聴かせ、メンデルスゾーンの弦楽のための交響曲第8番で豊麗なラストを迎える。このメンデルスゾーン作品は、13歳の時に書かれた全4楽章の本格的な交響曲。彼ならではのチャーミングなメロディと流麗かつ濃密な弦楽器サウンドが横溢した音楽は、時に甘美、時にシリアスで、早熟の天才ぶりが如実に示されている。
 ここはぜひ、緻密さとフレッシュさを併せ持った表現力豊かなアンサンブルで、旋律美満載の好プログラムを堪能しよう。
文:柴田克彦


【公演情報】
東京春祭チェンバー・オーケストラ

2020.3/20(金・祝)15:00 東京文化会館 小ホール

●出演
東京春祭チェンバー・オーケストラ
ヴァイオリン:堀 正文、枝並千花、大江 馨、北田千尋、城戸かれん、城所素雅、戸原 直、外園萌香、三輪莉子
ヴィオラ:篠﨑友美、中 恵菜、山本 周
チェロ:辻本 玲、中条誠一、宮坂拡志
コントラバス:吉田 秀
ピアノ:迫 昭嘉

●曲目
モーツァルト:セレナード 第13番 ト長調 K.525 《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》
J.S.バッハ:チェンバロ協奏曲 第1番 ニ短調 BWV1052(ピアノ版)
メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲 第8番 ニ長調