アンドレアス・シャーガー(テノール)& ヘルムート・ドイチュ(ピアノ )

 アンドレアス・シャーガーは1971年生まれのオーストリア人テノール。この人が、ワーグナーの主役を歌う英雄的でドラマティックなテノール「ヘルデンテノール」として国際舞台に躍り出たのは、2013年4月、ベルリン国立歌劇場における《ジークフリート》公演の危機を救った時からだった。指揮者はダニエル・バレンボイム。タイトルロールはカナダ人のランス・ライアン。のはずだった。この日の開演時間は16時。ところが20分前になってもライアンの姿はない。大騒ぎとなり、本人に連絡を取ったところ、開演時間を18時と誤認していた。劇場まで1時間以上かかるという。このとき、劇場内のリハーサル室で進行中だった翌週の《神々の黄昏》の稽古に、シャーガーが参加していた。バレンボイムは直ちに決断する。10分後、《ジークフリート》の幕があがる。演出助手がライアンの衣裳をつけてジークフリートの演技をし、舞台袖からシャーガーが歌って第1幕を成功させる。事情を知った聴衆の熱い喝采を浴びながら、シャーガーは大急ぎでフィルハーモニーへ駆けつける。18時開演のラトル指揮《魔笛》に第1の僧侶役で出演するためだ。その頃には国立歌劇場にライアンが到着し、第2幕からは無事彼が出演した。これを機に世界的に数少ないヘルデンテノールの仲間入りを果たしたシャーガーは、同年秋に来日しチョン・ミュンフン指揮する東フィルの《トリスタンとイゾルデ》公演のトリスタンを歌って注目を集め、2016年東京・春・音楽祭の《ジークフリート》タイトルロールによって、さらに真価を知らしめた。

 今年は4月2日、5日の《トリスタンとイゾルデ》演奏会形式の主役を務め、4日後の9日には、リート歌手としての顔をみせてくれる。実は彼はワーグナーを歌う以前にリリック・テノールだった人。あの、恐れも汚れも知らない破天荒な若者から一転、もともとのキャラクターに立ち返って、恋の喜びと苦悩を繊細に歌いあげてくれるだろう。
文:萩谷由喜子

左:アンドレアス・シャーガー 右:ヘルムート・ドイチュ

*新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、海外からの渡航制限拡大により、予定していた出演者の来日がかなわなくなったため、本公演は中止となりました。(3/18主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.tokyo-harusai.com/news_jp/20200318/

【公演情報】
東京春祭 歌曲シリーズ vol.30
アンドレアス・シャーガー(テノール)&ヘルムート・ドイチュ(ピアノ)

2020.4/9(木)19:00 上野学園 石橋メモリアルホール

●出演
テノール:アンドレアス・シャーガー
ピアノ:ヘルムート・ドイチュ

●曲目
シューマン:《詩人の恋》 op.48
ベートーヴェン:《はるかな恋人に》 op.98
/他、R.シュトラウスの歌曲を予定。

●チケット料金(税込)
S¥8,000 A¥6,500 U-25¥1,500
※ U-25チケットは、2020年2月13日(木)12:00発売開始
(公式サイトのみでの取扱い)