オリ・ムストネンは1967年生まれのフィンランドのピアニスト。作曲家、指揮者としても活躍しているが、やはり彼の真骨頂はピアノにある。ただし、彼の場合、指揮や作曲という行為がピアニスト活動を妨げるものではなく、むしろ、そうした立ち位置を経験することにより、単にピアノだけ弾いていた時には見えてこなかった風景が開けて、それをピアノで表現するという、相乗効果を発揮しているようだ。特に作曲家でもあることが、ピアニスト、ムストネンに奥行きのある解釈と、一種の霊感のようなものをもたらしている。
今回彼が弾くのは、ショパンのマズルカ、ブゾーニ「J.S.バッハによる幻想曲」、自作ソナタ「イェヘキン・イーヴァナ」、スクリャービンのソナタと「詩曲」である。前半のショパンとブゾーニにも作曲家ムストネンの目線の生かされた演奏が予想されるし、同じフィンランドの先人音楽家の名を冠した自作ソナタはまして興味深い。また、スクリャービンはムストネンがもっとも好む作曲家の一人で、秀逸な録音もある。ムストネンのピアノは音の立ち上がりがよく、一音一音が蒼穹へ突き抜ける。スクリャービンとの相性はまことによい。
文:萩谷由喜子
*本公演は、2021年4月6日に延期となりました。
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/2021_olli_mustonen/
【公演情報】
オリ・ムストネン(ピアノ)
2020.3/22(日)15:00 東京文化会館 小ホール
●出演
ピアノ:オリ・ムストネン
●曲目
シベリウス:3つのソナチネ op.67
ショパン:
3つのマズルカ op.59
3つのマズルカ op.56
ブゾーニ:J.S.バッハによる幻想曲
ムストネン:ピアノ・ソナタ《Jehkin Iivana》
スクリャービン:
ピアノ・ソナタ 第10番 op.70
詩曲 op.72《焔に向かって》