東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.11 《トリスタンとイゾルデ》

 東京春祭恒例のワーグナー・シリーズの第11回は、満を持しての《トリスタンとイゾルデ》。指揮は、ポーランド出身ながら、今やドイツ音楽界の重鎮というべき、マレク・ヤノフスキ。彼は、東京春祭で2014年から17年まで「ニーベルングの指環」全曲を指揮し、16年と17年のバイロイト音楽祭でも同チクルスを担った。ベートーヴェン生誕250年にあたる今年は、バイロイト音楽祭で最終日の「第九」を指揮する予定。今回の《トリスタンとイゾルデ》でも、ヤノフスキはNHK交響楽団から引き締まった音を引き出し、辛口の演奏を聴かせてくれるだろう。

左より:マレク・ヤノフスキ C)Felix Broede、アンドレアス・シャーガー C)David Jerusalem、ペトラ・ラング C)Ann Weitz、マルクス・アイヒェ C)Michael Poehn

 キャストでは、トリスタン役のアンドレアス・シャーガーに注目。彼は東京春祭の16年の《ジークフリート》で圧倒的な名唱を披露した。今回のトリスタンでも彼の感情と一体となった熱唱が楽しみだ。そのほか、イゾルデにペトラ・ラング、ブランゲーネにエレーナ・ツィトコーワ、マルケ王にアイン・アンガー、クルヴェナールにマルクス・アイヒェ、メロートに甲斐栄次郎と、歌手陣に隙がない。バイロイト音楽祭やウィーン国立歌劇場に匹敵する豪華さといえよう。

 このワーグナー・シリーズの初回から演奏を務めるN響にも期待せずにはいられない。細部までおろそかにしないヤノフスキ指揮によって生み出されるN響の緻密なアンサンブルは、ワーグナーの管弦楽法の醍醐味を満喫させてくれるだろう。
文:山田治生

*新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、海外からの渡航制限拡大により、予定していた多くの出演者の来日がかなわなくなったため、本公演は中止となりました。(3/18主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.tokyo-harusai.com/news_jp/20200318/


【公演情報】
東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.11
《トリスタンとイゾルデ》(演奏会形式/字幕・映像付)

2020.4/2(木)、4/5(日)各日15:00 東京文化会館 大ホール

●出演
指揮:マレク・ヤノフスキ
トリスタン(テノール):アンドレアス・シャーガー
マルケ王(バス):アイン・アンガー
イゾルデ(ソプラノ):ペトラ・ラング
クルヴェナール(バリトン):マルクス・アイヒェ
メロート(バリトン):甲斐栄次郎
ブランゲーネ(メゾ・ソプラノ):エレーナ・ツィトコーワ
牧童、若い水夫の声(テノール):菅野 敦
舵取り(バリトン):髙田智士
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ

●曲目
ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》(全3幕)
[上演時間:約5時間(休憩2回含む)]