小山裕幾(フルート)&イ・ジナ(フルート)

 聴く機会が稀なフルート二重奏のコンサート。演奏するのはフィンランドを拠点に活躍する名手たちである。

 小山裕幾は、2005年の第6回神戸国際フルートコンクールで第1位を獲得した実力者。パユとデュフォーの両ベルリン・フィル首席奏者をはじめ、世界の一流楽団の主力を多数輩出している同コンクールで優勝した、唯一の日本人奏者である。慶應義塾大学理工学部卒業後の10年からスイスのバーゼル音楽院で学び、14年フィンランド放送交響楽団の首席奏者に就任。日本でのソロ活動も光り、東京春祭でもお馴染みの存在となっている。パートナーはイ・ジナ。韓国出身の彼女は、国内のコンクールで実績を挙げた後、11年からやはりバーゼル音楽院で学んだ。16年、フィンランド国立オペラのメンバーを中心に結成されたLumo木管五重奏団のメンバーとなり、同国で演奏活動を開始。翌年にはフランスのリオン国際室内楽コンクールで第2位を受賞している。

 今回は、多数のレアなフルート二重奏曲だけでなく、各々がテレマンのファンタジーと現代曲を披露するので、デュオの妙味と個性の違いを共に楽しめる。もちろん、バーゼル音楽院で学び、フィンランドで活動する二人の息の合った演奏が最大の聴きもの。柔らかみとシャープな切れ味を併せ持った楽器が綾なす妙なる音色を堪能できる上、現代絵画に囲まれた会場での異空間的な音楽体験も味わえる、稀少な公演だ。
文:柴田克彦


【公演情報】
ミュージアム・コンサート
小山裕幾(フルート)&イ・ジナ(フルート)
〜現代美術と音楽が出会うとき

2019.3/29(金)19:00 上野の森美術館 展示室

●出演
フルート:小山裕幾
     イ・ジナ

●曲目
ミシェル・ブラヴェ:ブラヴェ氏の前奏曲
ジャック=マルタン・オトテール:2つのフルートのための小品 op.2
カリヤ・サーリアホ:翼の簡潔さ(小山裕幾)
テレマン:ファンタジー 第10番(イ・ジナ)
ブライアン・チャーニー 2本のフルートのためのドッペルゲンガー
イサン・ユン:フルートのための練習曲 第5番(イ・ジナ)
テレマン:ファンタジー 第7番(小山裕幾)
平井京子:フルート二重奏曲
武満徹 2本のフルートのためのマスク
ロバート・ムチンスキ:フルート二重奏曲

●チケット料金(税込)
全席自由¥3,600