東京春祭のファンであればおなじみのレギュラー企画であり、1日で一人の作曲家やテーマを深掘りしてきた「東京春祭マラソン・コンサート」。午前11時から午後8時までの間に約１時間のコンサートが5回開催される中、集中的に音楽や歴史などを理解できるという声も多く、クラシック音楽の聴き方がより深まるという発見づくしのコンサートだといえるだろう。今年は西洋音楽の発展を支えてきた「宮廷」をクローズアップ。時代や地域などを超越した作品を聴きながら、「宮廷と音楽文化」についての知見を深めることができるラインナップだ。

　コンサートは5つの切り口・キーワードで構成され、それぞれに多彩な作品が紹介される。午前11時からは祝典の音楽を中心とした「祝祭の響き」（バロック音楽からウィンナ・ワルツまで）、13時からは君主たちに愉悦の時間を与えた「楽器の響き」（フリードリヒ２世やマリー＝アントワネットの作品も）、15時からは神への感謝と礼拝をテーマにした「祈願の響き」（モーツァルト父子やサリエリの曲など）、17時からは国主や国家への忠誠を奏でる「賛美の響き」（リストやチャイコフスキーなど多彩な作曲家たちを）、そしてフィナーレとなる19時からは文化繁栄の背景に欠かせない「支援の響き」（ベートーヴェンの交響曲ほか）。企画者である小宮正安氏のガイド・トークもあわせ、知識欲を刺激される充実した1日を体験できるだろう。
文：オヤマダアツシ

【公演情報】
東京春祭マラソン・コンサート vol.9
宮廷の時代――5つの”響き”　
〜ヨーロッパの芸術と宮廷の歴史をひも解く（日本・オーストリア国交樹立150周年記念）

2019.4/6（土）第I部：11:00〜第II部：13:00〜第III部：15:00〜第IV部：17:00〜第V部：19:00〜
東京文化会館 小ホール［各回約60分］

●出演
企画構成・お話：小宮正安（ヨーロッパ文化史研究家/横浜国立大学大学院都市イノベーション学府教授）

●演奏
ヴァイオリン：ライナー・キュッヒル、白井 篤、横島礼理
ヴィオラ：佐々木 亮、中村翔太郎、中村洋乃理
チェロ：市 寛也、宮坂拡志
コントラバス：吉田 秀
フルート：甲斐雅之、梶川真歩
オーボエ：青山聖樹、坪池泉美
クラリネット： 伊藤 圭
ホルン：今井仁志、石山直城
トランペット：菊本和昭
ソプラノ：鵜木絵里、三井清夏
メゾ・ソプラノ：小泉詠子
二期会合唱団
ソプラノ：田崎美香 メゾ・ソプラノ：喜田美紀 テノール：園山正孝 バス：寺西一真
オルガン：大木麻理
ピアノ：朴 令鈴、山田武彦、三輪 郁 /他

●曲目
I部 祝祭の響き
ヘンデル（レイサム編）：組曲《王宮の花火の音楽》HWV351 より 序曲
ラモー（デュカス編）：オペラ・バレ《優雅なインドの国々》よりロンドー
J.ブル（バントック編）：王の狩
J.シュトラウス2世（シェーンベルク編）：皇帝円舞曲
グルック（モーエン編）：歌劇《オルフェオとエウリディーチェ》（ウィーン版）より 第3幕 フィナーレ

第II部 楽興の響き
J.M.モルター：クラリネット協奏曲 第1番 イ長調 より 第1楽章
A.カルダーラ：《報いられし気品》より「黙れ!苦しみよ!」
フリードリヒ2世（ヴァルダーゼー編）：フルート・ソナタ 第2番 ハ短調
マリー=アントワネット（ヴェッケルラン編）：私の大切な人
J.S.バッハ（レーガー編）：ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調 BWV1050

第III部 祈願の響き
ラインハルト：トランペット・ソナタ
レオポルト1世：天の女王よ
A.サリエリ：イエスの母君
L.モーツァルト：汝はまことの人、まことの神
モーツァルト：モテット《踊れ、喜べ、幸いなる魂よ》（ザルツブルク版）K.165

第IV部 賛美の響き
チャイコフスキー（作曲者編）：デンマーク国歌に基づく祝典序曲 op.15
パガニーニ：「神よ、王を守りたまえ」に基づく変奏曲 op.9
リスト：アンリ4世万歳!S239
G.ガベッティ：王室行進曲
チェルニー：ハイドンの「神よ、皇帝フランツを守り給え」に基づく変奏曲 op.73

第V部 支援の響き
ベートーヴェン（フンメル編）：交響曲 第1番 ハ長調 op.21 より 第1楽章
ヴィヴァルディ：ヴァイオリン協奏曲集《チェトラ》より 協奏曲 第1番 ハ長調 RV.181a
リュリ（デルデヴェス編）：歌劇《アルセスト》より ガヴォットとロンドー
ハイドン（ヴラニツキー編）：オラトリオ《天地創造》Hob.XXI-2 より 導入部「混沌の描写」
G.ヴァン・スヴィーテン：交響曲

●チケット料金（税込）
全席指定：各会券¥2,500　1日券（5公演通し券）¥9,000