シェーンベルクーー20世紀に翻弄された巨人

 毎回、偉大な作曲家の軌跡をたどる「東京春祭ディスカヴァリー・シリーズ」。今年のテーマはシェーンベルク。日本・オーストリア国交樹立150周年を記念するコンサートでもある。
 シェーンベルクといえば、十二音技法や無調音楽で現代音楽の道を切り拓いた改革者として知られるが、作曲家としてのキャリアの初期には、後期ロマン派の影響を受けた非常にロマンティックな音楽(その代表例が《グレの歌》と「浄められた夜」)を書いていた。

 今回の演奏会では、作品1-1がつけられている「感謝」、「2つの歌」作品14、連作歌曲「架空庭園の書」抜粋などを含む初期の歌曲、「6つの小さなピアノ曲」作品19や、初めて完全な十二音技法を使って作られた曲を含む「5つのピアノ曲」作品23などのピアノ作品が演奏される。
 演奏には、バリトンの松平敬、ピアノの須藤千晴、中川俊郎ら、現代音楽を得意とする実力派が揃う。そして日本学術振興会特別研究員の白井史人のお話も挟まれる。今年の「東京春祭」では、《グレの歌》や「浄められた夜」が上演されるが、その周辺を知る意味でも、このコンサートは注目される。
文:山田治生


【公演情報】
東京春祭ディスカヴァリー・シリーズ vol.6
シェーンベルク――20世紀に翻弄された巨人
〜偉大な作曲家の軌跡をたどって(日本・オーストリア国交樹立150周年記念)

2019.3/21(木・祝)15:00 上野学園 石橋メモリアルホール

●出演
メゾ・ソプラノ:池田香織
バリトン:松平 敬
ピアノ:中川俊郎
ピアノ:須藤千晴
ピアノ:矢田信子
お話:白井史人(日本学術振興会 特別研究員)

●曲目
シェーンベルク:
 山鳩の歌(《グレの歌》より)
 感謝 op.1-1
 2つの歌 op.14
  I. 私は感謝するにはおよばない
  II. この冬の日々に
 渚にて
 4つの歌 op.2 《6つの小さなピアノ曲》 op.19
  I. Leicht, zart (軽やかに、柔らかく)
  II. Langsam (遅く)
  III. Sehr langsam (非常に遅く)
  IV. Rasch, aber leicht (速く、しかし軽やかに)
  V. Etwas rasch (いくぶん速く)
  VI. Sehr langsam (非常に遅く)
《架空庭園の書》 より
  第10曲 待ちこがれて私は美しい花壇をみつめる
  第12曲 深い草地の中できよらかに憩うとき
  第14曲 これ以上言わないで
  第15曲 わたしたちは夕闇の中にいた
《5つのピアノ曲》 op.23

●チケット料金(税込)
S¥3,600 A¥2,100 U-25¥1,500