ウェールズ出身で、1989年にカーディフ国際声楽コンクールで入賞を果たし、以来国際舞台で幅広い活躍をしているバスバリトンのブリン・ターフェルが10数年ぶりに来日する。それを聞いただけでも、もう声楽ファンは心が浮き立つのではないだろうか。
今回は、東京春祭ワーグナー・シリーズで得意とする《さまよえるオランダ人》のタイトルロールをうたうことになっているが、待望の歌曲リサイタルも予定されている。これこそごく間近で、おなかの底に響いてくるような圧倒的な存在感を放つ低音の魅力が存分に堪能できる演奏会ではないだろうか。
ターフェルは、オペラでは「悪役を演じさせたら世界一」と称され、迫力に満ちた歌声、幅広い演技力を披露し、190センチを超す堂々たる体躯で威厳を示すが、時折見せる茶目っ気たっぷりな笑顔も非常に魅力的だ。
歌曲リサイタルではアイアランド、クィルター、イベール、シューベルト、ブリテン、コープランドの他に「ウェールズの歌」も組まれ、ターフェルならではのお国柄を映し出す曲が披露される。人間の声の偉大さを全身で受け取り、ヒューマンな魅力にすっぽりと包まれるすばらしき一夜になりそうだ。
文:伊熊よし子
【公演情報】
東京春祭 歌曲シリーズ vol.25
ブリン・ターフェル(バスバリトン)
2019.3/28(木)19:00 東京文化会館 小ホール
●出演
バスバリトン:ブリン・ターフェル
ピアノ:ナターリア・カチュコヴァ
●曲目
アイアランド:
海ヘの情熱
放浪者
サン・マリーの鈴
クィルター:
今や深紅の花びらは眠る
もう泣かないで(《7つのエリザベス朝の詩》op.12より)
行け、愛らしいバラよ
喜びの麗しき家
イベール:
《4つのドン・キホーテの歌》
ドン・キホーテの出発の歌
ドゥルシネアへの歌
公爵の歌
ドン・キホーテの死の歌
シューベルト:
酒宴の歌 D888
セレナード D889
シルヴィアに D891
クィルター:
《3つのシェイクスピアの歌》op.6
来たれ、死よ
おお、わが愛しの人よ
吹けよ、吹け、冬の風よ
ブリテン:
霧めく、霧めく露(民謡編曲 第3集《イギリスの歌》より)
コープランド:
川のほとり
チンガ・リング・チョウ /他
●チケット料金(税込)
S¥12,800 A¥10,800 U-25¥2,100