歌曲シリーズ vol.27 藤木大地(カウンターテナー)

 カウンターテナーは、ファルセット(裏声)によって女性の声域の声を出す歌手を指す。16世紀から17世紀の教会音楽で用いられた男性アルト歌手で、現在は国際舞台で通用するカウンターテナーは世界に数人しかいないといわれるきびしい世界だ。そんな高いハードルを一気に飛び越え、ウィーン国立歌劇場で鮮烈なデビューを飾ったのが藤木大地。アリベルト・ライマンが同劇場のために作曲し、2010年に世界初演された「メデア」のヘロルド役で17年4月、東洋人のカウンターテナーとして史上初の快挙を成し遂げた。

 藤木大地はテノールからカウンターテナーに転向し、イタリアのボローニャとウィーンで研鑽を積んだ。特に50年以上に渡り声楽伴奏者として活躍するピアニストのマーティン・カッツからは、多大な教えを受けている。いつの日かカッツと録音をしたいと願っていたが、それが実現し、さらに今春、カッツとの共演でR.シュトラウスやマーラーなどの歌曲をうたうリサイタルが実現。夢を次々にかなえている。ここでは加藤昌則の連作歌曲集の世界初演も含まれている。

「私は細部が芸術に魂を与えると考え、こまやかな表現を心がけ、1曲1曲人生を賭けて演奏に臨みます。私は本物の芸術を極めたい、常にそう願っていますから」
 東京・春・音楽祭のステージでも、入魂の歌唱を聴くことができるに違いない。
文:伊熊よし子


【公演情報】
東京春祭 歌曲シリーズ vol.27
藤木大地(カウンターテナー)

2019.4/13(土)19:00 東京文化会館 小ホール

●出演
カウンターテナー:藤木大地
ピアノ:マーティン・カッツ

●曲目
クィルター:《3つのシェイクスピアの歌》 op.6
 I. 来たれ 死よ I. Come Away, Death
 II. おお、愛しき人よ II. O Mistress Mine
 III. 吹け、吹け、冬の風 III. Blow, Blow, Thou Winter Wind

R.シュトラウス:《4つの歌》 op.27
 I. 憩え、わが魂 I. Ruhe, meine Seele
 II. ツェチーリエ II. Cäcilie
 III. ひそやかな誘い III. Heimliche Aufforderung
 IV. 明日こそ IV. Morgen

加藤昌則:連作歌曲集〔世界初演〕

マーラー:《リュッケルトの詩による5つの歌曲》
 I. 私の歌を覗き見しないで I. Blicke mir nicht in die Lieder
 II. 私はほのかな香りを吸い込む II. Ich atmet’ einen linden Duft
 III. 私はこの世に捨てられて III. Ich bin der Welt abhanden gekommen
 IV. 真夜中に IV. Um Mitternacht
 V. 美しさゆえに愛するのなら V. Liebst du um Schönheit

ヴォーン・ウィリアムズ:《旅の歌》
 I. 放浪者 I. The Vagabond
 II. 美しい人よ目覚めよ II. Let Beauty Awake
 III. 道端の火 III. The Roadside Fire
 IV. 青春と恋 IV. Youth and Love
 V. 夢の中で V. In Dreams
 VI. 無限に輝く空 VI. The Infinite Shining Heavens
 VII. 私はいずこにさすらうか? VII. Whither Must I Wander ?
 VIII. 言葉の響きは明るい VIII. Bright is the Ring of Words
 IX. 坂を上り、坂を下りた IX. I Have Trod the Upward and the Downward Slope

●チケット料金(税込)
S¥5,200 A¥4,100 U-25¥1,500