佐藤采香 ユーフォニアム・リサイタル

 ユーフォニアムといえば、吹奏楽ではおなじみだが、クラシックファンの耳に触れるのは、「惑星」の「火星」や「展覧会の絵」の「ビドロ」など、限られた機会しかない。実はすこぶる魅力的なソロ楽器であり、柔らかくまろやかな音色の心地よさは、全楽器の中でも屈指。卓越した奏者の演奏を聴けば、魅了されること請け合いだ。

 佐藤采香は、そのユーフォニアム界に現れた超新星。1992年に生まれた彼女は、東京芸大で学んだ逸材で、今もスイス・ベルン芸術大学で腕を磨いている。2015年日本管打楽器コンクール第1位ほか様々な賞を受賞。18年には世界最高峰のリエクサ国際コンクールで日本人初優勝を成し遂げ、海外からも注目を集めている。これまでに、ぱんだウインドオーケストラの主力奏者を務めるほか、ソリストとして、東京フィル、東京シティ・フィル等と共演し、メディアにも多数出演。昨年末にはデビューCD『Beans』をリリースし、ハイクオリティの内容で賞賛を博している。

 彼女の演奏は、肉感的でふくよかな音色、滑らかでしなやかな歌い回し、鮮やかな超絶技巧で感嘆させるだけでなく、“聴かせる音楽”として楽曲を表現する点が素晴らしい。今回のプログラムは、多彩なオリジナル曲のほかに、「ロココの主題による変奏曲」「7つのスペイン民謡」といったクラシック作品も含まれている点が興味をそそる。これは、ブラス愛好家はもちろん、一般ファンにこそ聴いてほしい公演だ。
文:柴田克彦


【公演情報】
ミュージアム・コンサート
佐藤采香 ユーフォニアム・リサイタル

2019.4/3(水)19:00 国立科学博物館 日本館講堂

●出演
ユーフォニアム:佐藤采香
ピアノ:山中惇史

●曲目
久保哲朗:Beans
G.リチャーズ:「ピラトゥス」山の歌
M.ビッチュ:間奏曲
チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 イ長調 op.33
T.ドス:パルス
ファリャ:《7つのスペイン民謡》 より
 ムーア人の織物
 ナナ
 カンシオン
 ポロ
P.ウィルビー:
 日本庭園の3つの即興曲
 フライト

●チケット料金(税込)
全席自由¥3,600