「東京・春・音楽祭」のオープニングを飾るウィーンの調べ。第1コンサートマスターの“まろ”こと篠崎史紀をはじめとするNHK交響楽団の精鋭弦楽器奏者5名に、ハーモニウム(一種のリード・オルガン)とピアノを加えた室内楽の編成で、優美な音楽を聴かせる。
高校卒業と同時にウィーンへ留学して8年間学んだ篠崎にとって、当地の音楽は馴染みの存在。こうした室内楽編成のウィーン音楽は、CDを複数リリースし、王子ホールの“MAROワールド”等で快演を披露してもいる。本公演は、そうした自家薬籠中の音楽を、呼吸も合ったN響の仲間たちと奏でる、クオリティと愉しさ保証付きのコンサートだ。
前半のクライスラーの小品はポピュラーな代表作揃いゆえ、甘いメロディを存分に堪能できる。次にドヴォルザークのバガテルop.47が置かれているのもセンス抜群。これはスラヴの民俗的な哀感漂う親しみやすい作品だが、ハーモニウムを含むこともあって生演奏は皆無に近く、今回は貴重な機会となる。最後の3曲は、新ウィーン楽派の面々が編曲したウィンナ・ワルツ。いずれも彼らが新作等を発表した「私的演奏協会」の公演で披露されている、いわば本気のアレンジだ。ここは、あのシリアスなシェーンベルク、ウェーベルン、ベルクが、その血に流れるウィンナ・ワルツをいかに料理しているか?をリアルに知ると同時に、小編成ならではの音の綾も楽しめるので、ぜひ生体験したい。
文:柴田克彦
【公演情報】
オープニング・コンサート〜N響メンバーによる室内楽
〜ウィーンのワルツ物語(日本・オーストリア国交樹立150周年記念)
2019.3/15(金)19:00 東京文化会館 小ホール
●出演
ヴァイオリン:篠崎史紀、白井 篤
ヴィオラ:中村翔太郎
チェロ:桑田 歩
コントラバス:本間達朗
ハーモニウム:山口綾規
ピアノ:入江一雄
●曲目
クライスラー:
愛の喜び
愛の悲しみ
美しきロスマリン op.55-4
ウィーン奇想曲 op.2
ドヴォルザーク:バガテル op.47
J.シュトラウス2世(ベルク編):ワルツ《酒、女、歌》
J.シュトラウス2世(ウェーベルン編):ワルツ《わたしの恋人》
J.シュトラウス2世(シェーンベルク編):ワルツ《南国のばら》
●チケット料金(税込)
S¥5,200 A¥4,100
U-25¥1,500
※U-25チケットは、2019年2月8日(金)12:00発売開始