1987年ロシアに生まれ、8歳のときにドイツに移住したイゴール・レヴィットは、これまでバッハやベートーヴェンの録音で高い評価を得ている。そんな彼がつい先ごろリリースした新譜は、親しい友人の死に遭遇し、深い喪失感と悲しみを表現したアルバム。「ライフ(人生)」と名付けられたこの録音は、ブゾーニ、バッハ、シューマン、リストが組まれているが、特筆すべきはポーランド系アメリカ人の作曲家、フレデリック・ジェフスキ(1938〜)の作品が収録されていることである。
レヴィットはジェフスキの作品をこよなく愛し、2014年6月に急病となったマウリツィオ・ポリーニの代役としてウィーン・ムジークフェラインザール(楽友協会大ホール)でリサイタルを行った際、ジェフスキの代表作と称される「《不屈の民》変奏曲」を演奏した。レヴィットは当日の昼に代役を打診され、夕方の6時半にウィーン空港に到着し、7時半からのリサイタルに登場。そしてベートーヴェンのピアノ・ソナタ第30番、第31番を演奏し、さらにこのジェフスキの変奏曲を演奏して、ポリーニのキャンセルで落胆していた聴衆の度肝を抜いた。この作品はジェフスキの特徴である政治的で即興的な内容。演奏の難度の高さはベートーヴェンの「ディアベリ変奏曲」に匹敵するといわれる。
今回は、その2曲の変奏曲が演奏される。レヴィットの底知れぬ魔力が全開しそう。日本のファンにも衝撃を与えるに違いない。
文:伊熊よし子
【公演情報】
イゴール・レヴィット (ピアノ) II
〜THE VARIATIONS
2019.4/13 (土)14:00 東京文化会館 小ホール
●出演
ピアノ:イゴール・レヴィット
●曲目
ベートーヴェン:ディアベリのワルツによる33の変奏曲 ハ長調 op.120
ジェフスキ:《不屈の民》変奏曲
●チケット料金(税込)
S ¥6,200 A ¥4,600
U-25 ¥1,500
※ U-25チケットは、2019年2月8日(金)12:00発売開始(公式サイトのみでの取扱い)