東京・春・音楽祭 東京春祭マラソン・コンサートvol.1               ウィーン、わが夢の街〜マーラーが生きた世紀末ウィーン


 あの時代、そこに生きていたら?19世紀後半〜20世紀前半のウィーンは、ある種の憧れとノスタルジーを感じさせる。ブラームス、マーラーから新ウィーン楽派へ至る音楽に、美術、建築、文学…まさに魅惑の文化爛熟期だ。そんな世紀転換期のウィーンを、1日かけて音楽で旅しようというのが、東京春祭マラソン・コンサートvol.1「ウィーン、わが夢の街〜マーラーが生きた世紀末ウィーン」。午前11時から夜まで全5公演が行われる。
 第Ⅰ部は、ブラームス晩年のピアノ小品とクラリネット・ソナタを、正統派・伊藤恵と読売日響首席・藤井洋子がしみじみと奏でる。第Ⅱ部は、古き舞曲からオペレッタ“銀の時代”のワルツに至る流行りの舞踊音楽を、チェンバロの旗手・中野振一郎が愉しく披露。第Ⅲ部は、実力派・青柳晋ほかによるピアノ四重奏曲、ドイツ歌曲の第一人者・小松英典が歌う「亡き子をしのぶ歌」に、弟子ワルター編曲の4手ピアノ版・交響曲「巨人」第1楽章が続く、若干レアなマーラー名曲集。第IV部は、マーラーと親交のあったヴォルフ、R.シュトラウスなど5人の歌曲を、名ソプラノ天羽明恵が清澄に歌う。第V部は、新ウィーン楽派3人十ツェムリンスキーの室内楽曲等を、クァルテット・アルモニコやソリスト陣が美しく奏で、「浄められた夜」の陶酔へと導く。
 マーラ一イヤー絡みの企画の中でも、系統的かつユニークなこの公演で、佳き時代の空気にたっぷりと浸ろう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2011年4月号から)

★4月3日(日)・東京文化会館(小)
問:東京・春・音楽祭実行委員会03-3296-0600

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