街歩き 番外編(3)Bar Jimador

 「Jimador」と書いて「ヒマドール」と読む。これはメキシコで最も古い蒸溜所の一つ、エドゥーラ社が生産するテキーラ「エル ヒマドール」の名前でもある。同国で最大の販売量を誇るテキーラで、オーク樽で2ヶ月熟成した「レポサド」は、原料のアガヴェ(竜舌蘭)の甘さを活かした滑らかな味わいが特長だ。
(取材・文:渡辺謙太郎 写真:中村風詩人)

様々なテキーラボ・トルを眺められるカウンター席。味わいのある長いすはメキシコで買い付けてきたもの。

様々なテキーラボ・トルを眺められるカウンター席。味わいのある長いすはメキシコで買い付けてきたもの。

 「“ヒマドール”は“アガヴェの葉を刈る職業”という意味。テキーラのそもそもの生産者である彼らに敬意を表し、店名に選びました」と語るのは、オーナーの佐藤誠さん。アジア最大級のテキーラ・コレクション・バーとして名高い六本木の「AGAVE」や、銀座の老舗ラム・バー「Lamp」で修行した彼がこの地でテキーラ&ラム中心のバーを開いたのは、奇しくも前述の「Bar 井上」と近い2014年10月。店舗も井上の隣のビルの2階にあり、この細い路地は一躍、湯島のバーのホットスポットになった。
オーナー・バーテンダーの佐藤誠さん

オーナー・バーテンダーの佐藤誠さん

 赤い壁が印象的なカウンター8席&テーブル4席には、メキシコから取り寄せた椅子や置物が置かれ、BGMに流れているのもシックなメキシコ音楽。まるで現地の秘密の隠れ家のようだ。バックバーに並ぶボトルは、現在約210本(テキーラとラムの比率は約3対1)。ボトルの高さやデザインが実に多様で面白い。
個性的なテキーラ・ボトル

個性的なテキーラ・ボトル

 テキーラのチェイサーは、オリジナルの「サングリータ(スパイシーなトマトジュース)」を提供。現地の伝統的なテキーラの飲み方で、舌の麻痺や酔いを巧みに抑えてくれる。
 佐藤さんはこうした蒸留酒だけでなく、フードやカクテルにも全力投球。メニューには、「タコス・デ・トリッパ」「トルティーヤ・ドッグ」「サボテンのサラダ」など、本格的なメキシコ料理が多数並ぶ。
 春めいて喉が渇くこれからの季節には、テキーラを使ったカクテルもぜひ。テキーラをグレープフルーツとソーダで割った「パローマ」や、サボテン型の大振りなグラスで供される「フローズン・マルガリータ」などは、実に喉越しのいい1杯だ。
テキーラをグレープフルーツとソーダで割った「パローマ」

テキーラをグレープフルーツとソーダで割った「パローマ」

 そして佐藤さんは、前述の井上さんと同様に、「東京・春・音楽祭」のためにオリジナル・カクテルも考案してくれた。同量のテキーラとサングリータをシェイクしたこちらの1杯は、「暖かい春」を意味する「プリマヴェーラ・カリエンテ」。「“カリエンテ”には“熱い”という意味もあるので、“辛い”味わいにも掛けてみました」ということなので、その研ぎ澄まされた“熱さ”を五感で堪能して欲しい。
東京・春・音楽祭 開催中のみに提供のスペシャル・カクテル「プリマヴェーラ・カリエンテ」

東京・春・音楽祭 開催中のみに提供のスペシャル・カクテル「プリマヴェーラ・カリエンテ」

Bar Jimador(バー ヒマドール)
文京区湯島3-44-1 高橋ビル 2F
03-5818-0037
営業時間:19〜5時
休業日:日曜日
※「東京・春・音楽祭」期間中は、こちらの記事を読んだと佐藤さんに伝えると、テーブルチャージ500円を無料サービス

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