モーツァルトは35歳で世を去った。その6年後に、シューベルトが生まれた。この人もまた31歳で亡くなっている。「神に愛された者は若くして召される」という諺があるが、二人とも眩しい才能を輝かせて神の元に召されてしまった。
今回のプログラムはウィーンで活躍した二人の天才の作品を組み合わせた。シューベルトは10代半ば頃から毎年のように6曲の交響曲を書きおろしたが、そこにはベートーヴェン、モーツァルト、ハイドンなどの影響と共に、天性のメロディーメーカーの才能も刻印されている。第4番「悲劇的」は10代最後に書いた交響曲の一つ(!)で、タイトル通り重苦しい序奏で始まり、管弦楽の魅力を捕らえた堂々たる作品。モーツァルトの「レクイエム」は文字通り辞世の作で、謎の依頼に慄きながら筆を進めたというエピソードはあまりにも有名だ。早熟と夭逝という不思議なめぐりあわせを感じさせる選曲である。
指揮はシュテファン・ショルテス。ウィーンに学び、独墺圏各地の劇場を長年に渡って率いてきた実力者で、大曲をまとめ上げる職人的なリードには定評がある。コンヴィチュニーの演出した東京二期会のオペラ《サロメ》(2011年)、新国立劇場のオペラ《ばらの騎士》(2015年)などでその手腕に接した人も多いだろう。どちらも演出が話題を呼んだが、ショルテスが作る緻密なアンサンブルは公演成功の原動力となった。独唱にはベテランの天羽明惠(ソプラノ)を筆頭に、金子美香(メゾソプラノ)、西村悟(テノール)、大西宇宙(バリトン)という躍進中の歌手を揃えた。
合唱は東京オペラシンガーズ、管弦楽は東京都交響楽団。東京・春・音楽祭はオペラをはじめ、歌ものの公演を幅広く提供してきた。10周年を記念して2014年にスタートした「東京春祭 合唱の芸術シリーズ」も8回目(ただし昨年度第7回は中止)だが、シリーズを支えてきたコンビが今年も大曲を贈る!
文:江藤光紀
【公演情報】
東京春祭 合唱の芸術シリーズ vol.8
モーツァルト《レクイエム》
2021.4/11(日)15:00 東京文化会館 大ホール
●出演
指揮者:シュテファン・ショルテス
ソプラノ:天羽明惠
メゾ・ソプラノ:金子美香
テノール:西村 悟
バリトン:大西宇宙
管弦楽:東京都交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:田中祐子
●曲目
シューベルト:交響曲第4番 ハ短調 D417《悲劇的》
モーツァルト:レクイエム ニ短調 K.626
●料金(税込)
S¥11,000 A¥9,500 B¥8,000 C¥6,500 D¥5,000 E¥4,000 U-25¥2,500
ライブ・ストリーミング配信 ¥2,500
【来場チケット販売窓口】
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