東京春祭のStravinsky vol.8 ストラヴィンスキーの室内楽

 東京・春・音楽祭に欠かせぬ企画のひとつが「東京春祭のStravinsky」シリーズだ。2012年からほぼ毎年恒例の枠になっているだけでなく、この音楽祭の略称「春祭」は、もちろんストラヴィンスキーの代表作《春の祭典》の略称でもあるわけで、切っても切れない関係にあるのだ。今年は4月6日で没後50年という節目にあたるため、ストラヴィンスキーを振り返るのにうってつけのタイミングといえるだろう。

 東京春祭のStravinsky vol.8のテーマは「ストラヴィンスキーの室内楽」。ブーレーズからの信頼も厚かった、近現代音楽のスペシャリストであるピアニストの永野英樹を迎えて、《春の祭典》を書き上げたあとのストラヴィンスキーが手掛けた、独奏から三重奏、編成の小さなレパートリーを披露する。

 まずはストラヴィンスキーがヴァイオリンとピアノのデュオのために残した親しみやすいレパートリーを取り上げる。共演するのは、永野と同時期に東京藝術大学附属高校・東京藝大で学んだヴァイオリン奏者の川田知子だ。
 その後に永野の独奏で、意外と生演奏で聴く機会の少ないピアノ曲が続く。これらは1910〜20年代に流行していたポピュラーミュージックからの影響を取り入れた作品なのだが、永野のような深い作品理解に基づく演奏でこそ、真価が理解できるようになるはず。比較対象としてジョージ・アンタイルの作品が並ぶのも、にくいセレクトだ。

 4手ピアノ作品が編曲された「行進曲、ワルツ、ポルカ」から、永野と同じくパリに留学したクラリネット奏者の松本健司が加わる。なんといっても聴きどころは、《兵士の物語》の組曲版。オリジナルは七重奏だが、ストラヴィンスキー本人がヴァイオリン、クラリネット、ピアノによる三重奏に編み直したバージョンは、物語面ではなく音楽として《兵士の物語》の何が面白いのか、そのエッセンスが詰まった名編曲。これだけの名手が集う生演奏の機会もそう多くないだけに聴き逃がせない。
文:小室敬幸

左より:永野英樹 C)J.RADEL、川田知子、松本健司


【公演情報】
東京春祭のStravinsky vol.8
ストラヴィンスキーの室内楽 永野英樹(ピアノ)と仲間たち

2021.4/8(木)19:00 東京文化会館 小ホール

●出演
ピアノ:永野英樹
ヴァイオリン:川田知子
クラリネット:松本健司

●曲目
ストラヴィンスキー:
 イタリア組曲
 協奏的二重奏曲
 バレエ音楽《ペトルーシュカ》より「ロシアの踊り」
 ピアノ・ラグ・ミュージック
アンタイル:ジャズ・ソナタ
ストラヴィンスキー:
 タンゴ
 サーカス・ポルカ
 行進曲、ワルツ、ポルカ
 《兵士の物語》(ヴァイオリン、クラリネット、ピアノのための三重奏版)

●料金(税込)
S¥5,000 A¥3,500 U-25¥1,500
ライブ・ストリーミング配信 ¥1,500


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